小児悪性固形腫瘍と小児悪性リンパ腫の医師主導治験を開始

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2018-11-09 国立研究開発法人国立がん研究センター

国立研究開発法人国立がん研究センター(理事長:中釜 斉、東京都中央区)中央病院(病院長:西田俊朗)は、Anaplastic Lymphoma Kinase (ALK)異常を有する難治性悪性固形腫瘍と悪性リンパ腫の小児患者を対象に、アレクチニブ塩酸塩(以下アレクチニブ)の医師主導治験(NCCH1708、試験略称:PANDA)を本年6月より実施しています。本試験は国立がん研究センター中央病院単施設で実施しています。

小児がんにおける新薬の臨床開発(治験)は、個々のがんが極めて希少な疾患であり、患者数が少ないなどの理由から、ほとんど進まないことが課題とされています。製薬企業では、患者数の多い成人がんにおける臨床開発から進めることが一般的です。そこで、国立がん研究センターでは、薬剤の適応を小児まで拡大することなどを目的として、小児がんを対象とした医師主導治験を積極的に実施しています。

本試験は、ALK融合遺伝子陽性の進行・再発非小細胞肺がんに有効性が示され、承認が得られているALK阻害剤のアレクチニブが小児において安全に投与できるかを評価するための試験です。

神経芽腫、炎症性筋線維芽細胞腫瘍、未分化大細胞型リンパ腫、ユーイング肉腫や横紋筋肉腫などの肉腫に様々な様式のALK異常がみられる事より、ALK阻害剤であるアレクチニブが、複数の種類の小児がんに有効である可能性があると考えています。よって本試験は、臓器にかかわらず遺伝子異常の診断に基づきアレクチニブを投与する、バスケット試験(ある薬剤が標的とする遺伝子変異があれば、どのタイプのがん腫でも登録できる試験のこと)になります。

本試験でアレクチニブの小児における安全性が確認できれば、将来的な適応拡大の検討も可能となります。

本試験は中外製薬株式会社から薬剤提供を受け、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の革新的医療シーズ実用化研究事業の支援を受けて注:医師主導治験として実施されます。

研究費

国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)
革新的医療シーズ実用化研究事業(平成29年度から平成31年度)
「アレクチニブの小児難治悪性固形腫瘍に対する安全性および有効性についてのエビデンスの創出をめざした研究」

本試験の詳細

難治性悪性固形腫瘍または悪性リンパ腫の小児患者を対象とした アレクチニブの医師主導第Ⅰ相試験について - 荒川 歩【国立がん研究センター希少がんセンター】
この動画の情報は2018年11月時点のものです。 希少がんを対象とした臨床試験のご紹介【難治性悪性固形腫瘍または悪性リンパ腫の小児患者を対象としたアレクチニブの医師主導第Ⅰ相試験について】演者国立がん研究センター中央病院 小児腫瘍科/希少が...

本試験の概要

治療対象

本試験の対象は、ALK異常を有する難治性悪性固形腫瘍と悪性リンパ腫の小児患者さんです。まず、患者さんの腫瘍の検体で複数の手法を用いてALK異常が検出されるかを調べ、ALK異常陽性と診断された患者さんが本試験の対象となります。
小児がんは希少がんであり、患者数が非常に少ないため、がんの種類ごとに新規薬剤開発を進めることは非常に困難であるため、ALK異常を有する難治性悪性固形腫瘍と悪性リンパ腫を対象として、がんの種類を限定せずにアレクチニブの小児における安全性の評価を行います。

アレクチニブについて

アレクチニブは、中外製薬株式会社が開発した国内発のALK阻害剤で、ALKに対して高い選択的阻害活性を示します。
アレクチニブはALK融合遺伝子陽性の進行・再発非小細胞肺がんを対象とした第I/II相試験の結果をもとに、日本国内ではALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がんの治療薬として厚生労働省に承認されています。また、第III相試験において、従来標準的に行われてきた治療と比べ有効性で優れており、また安全に投与が可能である事が示されました。

医師主導治験について

新しい薬が承認され、保険で使えるようになるためには新薬の臨床開発(治験)が必要です。以前は製薬企業だけが治験を行っていましたが、2003年7月に医師や歯科医師が治験を企画して医薬品開発にかかわることが認められました。このように医師や歯科医師が自ら治験を実施することを医師主導治験といいます。抗がん剤はその適応が細かく厳しく定められています。あるがん種に効くであろうことがわかっている薬剤でも、適応外であれば使うことができません。そこで国立がん研究センターでは、医師主導治験を積極的に行い、抗がん剤をはじめとする薬剤の適応を広げる取り組み推進しています。

本試験の意義

標準の化学療法に抵抗性の再発難治小児固形腫瘍は、がんの種類を問わず予後が不良で、有効な治療がほとんどありません。また、小児がんが希少であることより、投資に見合った収益を承認後に得にくいこと等の理由から、企業治験が積極的に行われず、小児悪性固形腫瘍に対する新規薬剤の開発はほとんど進んでいないのが現状です。
近年、遺伝子検査により、治療のターゲットとなる遺伝子異常を見つけることが可能となってきています。しかしながら、小児においては遺伝子異常が見つかっても、使用可能な分子標的薬(遺伝子異常をターゲットとした抗がん剤)はほとんどないのが現状です。
ALK異常は、小児に多い複数のがんで高率に認められることから、アレクチニブが小児の複数のがん種に効果が期待できると考え、今回の医師主導治験を計画しました。本試験でアレクチニブの小児における安全性を確認し、本試験の結果及び海外の試験成績に基づき、有効性が期待できるがん種に対しては将来的な適応拡大の検討も可能となります。本試験の結果からアレクチニブの小児における承認取得まで結びつけることができれば、選択肢の少ない小児悪性固形腫瘍患者さんにおける非常に有望な治療選択肢となるとともに、本試験が症例数の少ない小児がんの領域において、遺伝子異常をターゲットとした分子標的薬の開発のモデルとなり、今後小児における分子標的薬の開発が進むことが期待されます。

患者さまからのお問い合せ先

国立研究開発法人 国立がん研究センター 希少がんセンター
希少がんホットライン

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