約6万7千人分の生体試料・情報の分譲を開始

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食事などの生活情報から検査値まで幅広い情報を網羅

2019-08-08 東北大学東北メディカル・メガバンク機構,岩手医科大学いわて東北メディカル・メガバンク機構,日本医療研究開発機構

発表のポイント
  • 東北メディカル・メガバンク計画は、長期健康調査によって得られた約6万7千人分の生体試料・情報の分譲を開始します。今回新たに分譲対象となるのは、当計画の地域住民コホート調査*1に特定健診共同参加型で参加された方全員のベースライン調査*2の生体試料とデータであり、これまでで最大のデータセットになります。
  • 分譲対象の試料はDNA・血漿・血清・尿、情報は調査票情報・血液と尿の検査情報・特定健診情報です。特に調査票情報は、食事、喫煙、飲酒、こころの健康など多岐にわたります(表)。
  • 約6万7千人分もの幅広い情報を多くの研究者が利用できるようになり、個別化予防等、次世代医療の実現の加速が期待されます。
内容

東北メディカル・メガバンク計画は、地域住民コホートのベースライン調査のうち、2013年から2015年にかけて主に特定健康診査会場にて調査にご協力いただいた方々の試料(DNA、血漿、血清、尿)・調査票情報・検体(血液・尿)検査情報・特定健康診査情報の分譲を開始します(表)。被災の程度などの参加者の特性・生活習慣・検査情報の分析を可能にします。

今回新たに分譲対象とするのは約6万7千人分のデータであり、喫煙・飲酒・身体活動等の基本情報に加え、こころの健康、睡眠、被災の影響、特定健康診査項目、血液・尿のデータが含まれています。多様かつ精度の高い分析が可能になることから、被災地における健康課題の抽出と対応策の検討、そして一人ひとりの体質に合わせた予防法の検討に活用いただけると考えています。 この情報は国内の疫学研究としても最大規模であり、これらの大規模データを広く活用いただくことは我が国の疫学研究の発展に貢献すると考えています。

新規に分譲する項目として、食事に関する頻度情報があります。この情報により、食事摂取頻度と検査データの関連を調べることが可能になります。

この約6万7千人分の大規模なデータは、所定の手続きの後(図)、統合データベースdbTMM*3を通してさまざまな条件で検索してデータを閲覧することができます。また、分譲申請を経たうえで(図)、分譲された試料や情報を用いた解析研究を行うことができます。分譲する試料・情報は個人の特定ができないよう匿名化されています。なお、調査で得られた試料・情報は、匿名化したうえで他研究機関に分譲可能なようインフォームド・コンセントを取得しております。

本研究は、日本医療研究開発機構(AMED)による東北メディカル・メガバンク計画のもと、東北大学東北メディカル・メガバンク機構(ToMMo)および岩手医科大学いわて東北メディカル・メガバンク機構(IMM)によって行われています。

表:当計画により分譲可能な試飲・情報

時期 分譲対象
2019年
8月
分譲開始
地域住民コホート 特定健診共同参加型の
対象者のベースライン調査の試料(DNA、
血漿、血清、尿)及び情報
基本情報(年齢・性別)
健康調査情報(検体検査情報、調査票
(生活・食)情報、特定健康診査情報)
※ただし、自由記載の項目は除外する
※ゲノム配列情報は今後追加予定
約6.7万人
現在
分譲中
日本人ヒト全ゲノム解析に基づく高精度
の住民ゲノムパネル(3.5KJPNv2)の
対象者の試料(DNA、血漿、血清、尿)
および情報
基本情報(年齢・性別)
健康調査情報(検体検査情報、調査票
(生活)情報、特定健康診査情報)
※ただし、自由記載の項目は除外する

全ゲノム解析情報
約3,300人
約2.3万人のSNPアレイ(ジャポニカア
レイ®もしくはHumanOmniExpressExome
BeadChip arrayなど)解析済の対象者の試料
(DNA、血漿、血清、尿)および情報
基本情報(年齢・性別)
健康調査情報(検体検査情報、調査票
(生活)情報、特定健康診査情報)
※ただし、自由記載の項目は除外する
SNPアレイ情報(一塩基バリアントの
個人毎遺伝型)及びインピュテーション
による擬似全ゲノム解析情報
約2.3万人
岩手県内に設置する5か所の会場で生理機能検査
を含む健康調査参加者の試料(DNA、血漿、
血清、尿)および情報、102名
の全ゲノム・エピゲノム・トランスクリプ
トーム情報
基本情報(年齢・性別)
健康調査情報(検体検査情報、
調査票(生活)情報、特定健康診査情報)
※ただし、自由記載の項目は除外する
生理機能検査情報
約8,300人
AMED先端ゲノム研究開発(GRIFIN)の
「多因子疾患の個別化予防・医療を実現
するための公開統合ゲノム情報基盤の構築」
の研究開発のジャポニカアレイ®および
メタボローム解析対象者の試料・情報
基本情報(年齢・性別)
健康調査情報(調査票(生活) 既往歴情報)
※ただし、自由記載の項目は除外する
約9,600人
MRI解析対象者の試料・情報
基本情報(年齢・性別)
健康調査情報(調査票(生活) 既往歴情報、
認知心理検査情報、MRI画像解析値)
※ただし、自由記載の項目は除外する
約4,300人

各変数の統計量は、統合データベースdbTMMカタログで閲覧いただけます。

今後の展望

今回新たに分譲対象とするデータセットについては、食事に関する頻度情報に加えて、妥当性検証を行ったうえで、栄養素の計算結果を追加する予定です。また、各情報に紐づけられたゲノム情報の分譲も視野に入れています。ゲノム情報と併せて分譲可能とすることにより、遺伝要因に応じて環境要因と疾病の関連がどのように異なるかを検証することが可能になります。

この先の分譲事業として、三世代コホート調査*4により得られる血縁関係を含む情報、そして地域支援センター*5で実施している呼吸機能や頸動脈エコーなどの詳細な生理学検査結果についても、早期に分譲を開始することを計画しています。

今後も、長期健康調査を継続しデータの充実と共有を推し進め、日本の医療の基盤を担います。

参考
東北メディカル・メガバンク計画について

東北メディカル・メガバンク計画は、東日本大震災からの復興と、個別化予防・医療の実現を目指しています。ToMMoとIMMを実施機関として、東日本大震災被災地の医療の創造的復興および被災者の健康増進に役立てるために、平成25年より合計15万人規模の地域住民コホート調査および三世代コホート調査等を実施して、試料・情報を収集したバイオバンク*6を整備しています。本計画については、平成27年度よりAMEDが研究支援担当機関の役割を果たしています。

用語等説明
*1.コホート調査:
ある特定の人々の集団を一定期間にわたって追跡し、生活習慣などの環境要因・遺伝的要因などと疾病発症の関係を解明するための調査のこと。「地域住民コホート調査」は東北メディカル・メガバンク計画により実施している20歳以上の方を対象としたコホート調査。
*2.ベースライン調査:
2013年から2015年にかけて実施したリクルート時の調査。
*3.統合データベースdbTMM:
2016年4月に発表した、東北メディカル・メガバンク計画で得られた各種情報を統合したデータベース。膨大なデータからの高速検索のほか、層別化集団の統計学的自動特徴付け等の機能を持つ。
*4.三世代コホート調査:
ToMMoが2013年7月より開始した、妊婦さんと生まれたお子さんを中心にしたコホート調査。2017年3月までに7万人以上の参加者を得ている。世界的に見ても貴重な大規模家系付きコホート調査である。
*5.地域支援センター:
詳細な生理学検査を行うセンター。宮城県内に7箇所設置している。岩手県内には矢巾センターおよび沿岸地区に4箇所のサテライトを設置している。
*6.バイオバンク:
生体試料を収集・保管し、研究利用のために提供を行う。東北メディカル・メガバンク計画のバイオバンクは、コホート調査の参加者から血液・尿などの生体試料を集める。
実施機関・関係ウェブサイト
お問い合わせ先
研究に関すること

東北大学東北メディカル・メガバンク機構
個別化予防・疫学分野
教授 寳澤 篤(ほうざわ あつし)

岩手医科大学いわて東北メディカル・メガバンク機構
臨床研究・疫学研究部門
部門長 丹野 高三(たんの こうぞう)

分譲に関すること

東北大学東北メディカル・メガバンク機構
試料・情報分譲室
室長 鈴木 吉也(すずき きちや)

報道に関すること

東北大学東北メディカル・メガバンク機構
長神 風二(ながみ ふうじ)

岩手医科大学いわて東北メディカル・メガバンク機構
遠藤 龍人(えんどう りゅうじん)

AMED事業に関すること

国立研究開発法人日本医療研究開発機構
基盤研究事業部 バイオバンク課

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