深層学習による野生のビデオ記録からのチンパンジーの顔認識に成功

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2019-09-05   京都大学

松沢哲郎 高等研究院特別教授、林美里 霊長類研究所助教らの研究グループは、人工知能(AI)の深層学習モデルを使って、野生のビデオ映像から個々のチンパンジーの顔を自動的に識別することに成功しました。

本研究は、本学が1976年から長期調査を続けている西アフリカのギニアの野生チンパンジーのビデオ映像記録を研究対象としました。1999年暮れから2012年まで14年にわたる森の定点で撮影したビデオ映像記録のうち、23個体の50時間の記録から得られた約1000万枚の顔画像を、オックスフォード大学の研究グループが開発した顔認識の「深い畳み込みネットワーク(CNN)」と呼ばれる深層学習モデルを用いて解析しました。

その結果、画像の92.5%で個体識別し、96.2%で男女の性別を認識することができました。さらにその大量データをもとに、14年にわたる社会変容を解析することにも成功しました。また、個体識別した資料に基づいて、だれとだれが近くにいるかに着目することで、社会的なネットワークの解析を行いました。

本研究は、新たな野外研究の解析手法を明示するとともに、野生チンパンジーの社会変容について明確な理解が得られたと言えます。

本研究成果は、2019年9月5日に、国際学術誌「Science Advances」のオンライン版に掲載されました。

図:本研究で開発した深層学習モデルによって、チンパンジーの個体識別と性別認識に成功した

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1126/sciadv.aaw0736

【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/243879

Daniel Schofield, Arsha Nagrani, Andrew Zisserman, Misato Hayashi, Tetsuro Matsuzawa, Dora Biro and Susana Carvalho (2019). Chimpanzee face recognition from videos in the wild using deep learning. Science Advances, 5(9):eaaw0736.

朝日新聞(9月5日 3面)、京都新聞(9月5日 25面)、産経新聞(9月5日 22面)、日本経済新聞(9月5日 34面)、毎日新聞(9月5日 23面)および読売新聞(9月5日 5面)に掲載されました。

詳しい研究内容について

深層学習による野生のビデオ記録からのチンパンジーの顔認識に成功

概要
京都大学高等研究院 松沢哲郎 特別教授、同霊長類研究所 林美里 助教らの研究グループは、人工知能 AI) の深層学習モデルを使って、野生のビデオ映像から個々のチンパンジーの顔を自動的に識別することに成功し ました。
本研究は、京都大学が 1976 年から長期調査を続けている西アフリカのギニアの野生チンパンジーのビデオ 映像記録を研究対象としました。2000 年 1999 年暮れ)から 2012 年まで 14 年にわたる森の定点で撮影し たビデオ映像記録に対して、AI とくにコンピュータービジョンに秀でたオックスフォード大学の研究チーム が顔認識の「深い畳み込みネットワーク CNN)」と呼ばれる深層学習モデルを新たに開発しました。このモ デルにより、初めて野生チンパンジーのビデオ画像から自動的に顔を識別し、その顔を継続して自動追跡し、 それにもとづいて個体識別することに成功しました。本研究では、23 個体の 50 時間の記録から得られた約 1000 万枚の顔画像を解析対象としました。その結果、画像の 92.5%で個体識別し、96.2%で男女の性別を認 識することができました。さらにその大量データをもとに、14 年にわたる社会変容を解析することにも成功 しました。また、個体識別した資料に基づいて、だれとだれが近くにいるかに着目することで、社会的なネッ トワークの解析を行いました。
こうした社会の変容について大量のビデオデータに基づく自動解析は、人の手では到底実現不可能です。本 研究は、新たな野外研究の解析手法を明示するとともに、野生チンパンジーの社会変容について とくに老齢 2 個体が社会の中で占める位置についての経年変化について、つまり年をとるとどうなるかについて)明確な 理解が得られたといえます。
本研究成果は、2019 年 9 月 5 日に国際学術誌「Science Advances」のオンライン版で公開されました。


本研究で開発した深層学習モデルによって、チンパンジーの個体識別と性別認識に成功した。

<研究グループについて>
本論文の第1著者でコレスポンディング著者は、ダニエル・ショフィールド Daniel Schofield, 英国オック スフォード大学博士課程大学院生)です。本研究は、オックスフォード大学 5 名と京都大学 2 名の合計 7 名 の著者の共同研究で、オックスフォード大学の 5 名は、コンピューター処理の専門家と野生チンパンジー研 究者です。京都大学の 2 名は以下のとおりです。
● 松沢哲郎、高等研究院特別教授、ボッソウの野生チンパンジー研究の実施と総括
● 林美里、霊長類研究所助教、ボッソウの野生チンパンジーのビデオアーカイブの責任者

<論文タイトルと著者>
タイトル:Chimpanzee face recognition from videos in the wild using deep learning 著 者:Daniel Schofield, Arsha Nagrani, Andrew Zisserman, Misato Hayashi, Tetsuro Matsuzawa, Dora Biro, Susana Carvalho
掲 載 誌:Science Advances  DOI:10.1126/sciadv.aaw0736

 

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