2024-07-31 東京大学
発表のポイント
- 放射性診断薬の新しい合成技術を開発し、DOTAキレートと呼ばれる物質を経由して抗体にジルコニウム-89を結合させることに成功しました。
- DOTAキレートとジルコニウム-89の結合反応には高温が必要である一方で抗体は高温条件で劣化してしまう問題を、クリックケミストリーと呼ばれる反応で回避することで抗体の熱劣化を防ぎました。
- 本技術によって合成された診断薬を利用することによりがん診断がより正確になり、がん治療の信頼性向上に貢献することが期待されます。
概要
東京大学アイソトープ総合センターの井村亮太客員研究員、張宰雄(ジャン ジェウン)助教、和田洋一郎教授、秋光信佳教授、および埼玉医科大学総合医療センターの熊倉嘉貴教授の研究グループは、新規の放射性診断薬合成技術を開発しました。本研究ではクリックケミストリー(注1)を利用することで抗体の熱劣化を回避しつつDOTAキレート(注2)を利用して陽電子放射断層撮影法(PET)(注3)に利用可能なジルコニウム-89(注4)を抗体医薬品に結合させることに成功しました。本技術で合成した診断薬を用いることで従来の診断薬を用いたがん診断よりも診断の正確性が向上することを動物実験で確認しました。がん診断の正確性が向上することで信頼性の高いがん治療に繋がることが期待されます。