感情に寄り添った学習指導・フォローによって学力向上を図るサービスの実現をめざす
2020-03-25 株式会社NTTドコモ,株式会社すららネット
株式会社NTTドコモ(以下、ドコモ)と株式会社すららネット(以下、すららネット)は、学習前の生徒に、学習内容とは無関係に「興奮」「興味」「喜び」の感情を持たせると、学習中の記憶力が有意に向上すること(以下、本効果)を明らかにしました。本効果の活用によって、学習前の生徒をより記憶力が高い状態に導くことによる学習効率の向上が期待できます。
本効果を実証するために小学4年生~中学3年生123名を対象に実験を実施しました。被験者を、「怒り」「興奮」「興味」「喜び」「落ち着き」「退屈」など14の感情をそれぞれ持っている状態に誘導した後、イラストの配置の記憶力テストと聞き取りによる単語の記憶力テストを行いました。記憶力テストの結果を比較することで、学習前の感情が記憶力に与える影響を検証しました。
その結果、学習前に、学習とは無関係の「興奮」「興味」「喜び」の感情を持った場合、記憶力テストの得点が高くなることがわかりました。
【検証イメージ】
本効果を活用することで、生徒が興味を持ちやすい雑談やミニゲームなど学習内容とは関係のない手段を用い、学習前の生徒に「興奮」「興味」「喜び」の感情を持たせることで、学習効率の高い状態を作り出すことができます。
今後は、ドコモの「音声から感情認識できる技術」※によって判定した生徒の感情と、すららネットの個別最適化eラーニングシステムのノウハウを組み合わせ、生徒の感情に寄り添った学習指導やメンタルフォローによって学力向上をもたらす業界初のサービスを開発し、2020年度中に学習塾や学校で実証実験を行う予定です。
また、両社は、実証実験にご協力いただける学習塾や学校の募集を開始します。
さらに、記憶力だけではなく、学習効率を高めるために重要な「注意力」や「自律性」などと感情の関連性についても今後実証をめざします。
本実験結果について、実験を監修した早稲田大学教育学部の上淵寿教授は「記憶の対象と関係のない学習前の感情が、子どもの記憶力に影響することを示す重大な結果である。これまで、感情と教育との接点は、感情が子どもの社会性や学習行動に影響する点に限定されがちであった。今回の実験で、感情が学力向上に役立つ可能性が示された教育上の意義は大きい。感情を活用した教育の質向上の取り組みに今後も期待したい」とコメントしています。
ドコモとすららネットは、今後も感情認識技術と教育ICTを組み合わせた教育の質向上の取り組みを進めてまいります。
※ ドコモの「音声から感情認識できる技術」は、実験室環境における中高生の自然発話音声に対する「興奮」「興味」「喜び」について70%以上の認識率を実現しました。また車のドライバー向けの「怒り」「喜び」「悲しみ」に対しては一般道走行中(時速40km)ならびに高速道走行中(時速70km)の車内においても平均70%の認識率を実現しています。
本件に関する報道機関からのお問い合わせ先
株式会社NTTドコモ
先進技術研究所コミュニケーションメディア研究グループ
株式会社すららネット経営管理グループ 広報担当
別紙
実験概要
1.実施
株式会社NTTドコモ、株式会社すららネット
2.実験日程
2019年12月15日(日)~2020年1月19日(日)
3.被験者数
123名(小学4年生~中学3年生)
4.目的
学習前の感情が記憶力に与える影響の検証ならびに記憶力向上に有効な感情の特定
5.実験詳細
・ 臨床心理士が被験者に対して ①対象の感情を生起 ②感情がない状態に誘導
◊ 対象の感情は「怒り」「不安」「恐れ」「覚醒」「興奮」「興味」「喜び」「快」「満足」「落ち着き」「眠気」「退屈」「悲しみ」「不快」
◊ 被験者に思い出やエピソードを聞き、臨床心理士との会話によって対象の感情を生起 ◊対象の感情が生起したことは被験者の自己評価により確認
・ ①と②のそれぞれの状態で、見て覚えるテストと聞いて覚えるテストの2種類の記憶力テストを実施
・ ①と②の記憶力テストの結果を比較することで、学習前の感情の有無が記憶力に与える影響を確認
実験の流れ
6.実験結果
・対象の感情が生起した被験者について、感情の有無による記憶テストの得点差を確認・学習前の「興奮」「興味」「喜び」が記憶力を有意に向上させることを特定