脳へのドラッグデリバリーシステムへの応用に期待
2018-06-27 愛媛大学,日本医療研究開発機構
この度、愛媛大学プロテオサイエンスセンタープロテオ創薬科学部門の竹田浩之准教授・部門長と、大阪大学薬学研究科の橋本洋祐さん(当時大学院生)、岡田欣晃博士、近藤昌夫博士らの共同研究チームは、愛媛大学発の技術であるコムギ無細胞タンパク質合成技術を活用し、血液脳関門を形成し脳への薬剤送達の障壁となっているクローディン5タンパク質を阻害するモノクローナル抗体の作製に成功しました。
脳の血管にある血液脳関門というバリアのため、薬が脳内に届きにくいことが大きな課題になっています。血液脳関門のバリア機能を担っているクローディン5という膜タンパク質の機能を抑えるには、クローディン5の外側部分に結合する抗体が有効です。しかし、従来の抗体作製技術ではクローディン5の細胞外領域に結合する抗体の作製は困難でした。共同研究チームは人工的に改変したクローディン5タンパク質をコムギ無細胞タンパク質合成技術で大量生産し、それを用いてクローディン5の細胞外領域に結合しバリア機能を低下させる抗体を創出することに成功しました。
本成果により、クローディン5を標的とした新たな脳内ドラッグデリバリーシステムの開発が進むことが期待されます。また、膜タンパク質の細胞外領域に結合する抗体を効率的に作製する手法は、抗体医薬開発を効率化する技術として、今後注目されると期待されます。
なお、本研究は、文部科学省/JST 大学発新産業創出プログラム(START)、文部科学省/日本学術振興会 科研費、AMED 創薬等ライフサイエンス研究支援基盤事業、先進医薬研究振興財団及び武田科学振興財団からの支援により実施されました。また、本研究成果は、総合学術誌Natureの姉妹誌である英国科学誌「Scientific Reports」に平成30年5月30日にオンライン掲載されました。
掲載誌
Scientific Reports
論文タイトル
Engineered membrane protein antigens successfully induce antibodies against extracellular regions of claudin-5
(和訳)改変した膜タンパク質抗原を用いてクローディン5タンパク質の細胞外領域に結合する抗体の誘導に成功
共同研究者
- 愛媛大学 プロテオサイエンスセンター
- 准教授竹田 浩之
- 教授澤崎 達也
- 愛媛大学 大学院医学系研究科
- 大学院生Zhou Wei
- 愛媛大学 大学院理工学研究科
- 大学院生浜内 孝太郎
- 大阪大学 大学院薬学研究科
- 教授近藤 昌夫
- 准教授岡田 欣晃
- 教授八木 清仁
- 教授土井 健史
- 大学院生橋本 洋祐
- 大学院生白倉 圭祐
AMED事業
- 事業名:
- 創薬等ライフサイエンス研究支援基盤事業
- 課題名:
- コムギ無細胞合成系による蛋白質生産支援・高親和抗体構築技術開発(平成24年度~平成28年度)
コムギ無細胞系による構造解析に適した複合体タンパク質生産・調製技術と低分子抗体作製技術の創出(平成29年度~平成33年度(予定)) - 代表者:
- 愛媛大学 プロテオサイエンスセンター 教授 澤崎 達也
本事業は、本事業に参加する研究者が自身の技術を高度化しつつ、外部研究者の研究を支援するものです。
本研究成果は、上記課題で愛媛大学が開発した膜タンパク質大量生産技術及び抗体作製技術を用いて、大阪大学の研究を支援したものです。
本件に関する問い合わせ先
研究内容
愛媛大学 プロテオサイエンスセンター
准教授 竹田 浩之
AMED事業
国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)創薬戦略部 医薬品研究課