2018-01-04 JICA
エジプト北部カフルエルシェイク県にあるハラルアハマル保育園で、20人ほどの園児が画用紙に向かっています。先生の合図で子どもたちは、思い思いにフィンガーペインティングやスタンプ押しを楽しみ始めました。日本の保育園ではよく見られる光景ですが、エジプトでもこうした保育を実践する園が徐々に増えてきています。
これはJICAの協力で2017年6月に始まった「就学前の教育と保育の質向上プロジェクト」の対象園での一コマです。従来のエジプトの就学前教育(幼児教育)は読み書きの習得が中心で、子どもたちが自由に遊ぶ時間はあまりありませんでした。そのエジプトで、子どもたちの自主性や創造性を高めるため「遊びを通じた学び」を導入・展開する動きが進んでいます。
エジプトでのJICAボランティアの実績が評価
子どもは、楽しく遊びながらさまざまなことを学びます。乳幼児期から成人期に至るまで、心身ともに健康で豊かな生活を送るためには、就学前の適切な幼児教育が大切だと指摘されています。
日本は2016年にエジプトと、「エジプト・日本教育パートナーシップ」を結びました。JICAは、この合意に沿って、就学前教育から高等教育までの教育システム全体の強化を支援しています。エジプト政府は幼児教育について、日本で実践されている「遊びを通じた学び」の導入など、保育の質を高めることに期待を持っています。
今回のプロジェクトでJICAは、5つの県の50保育園をモデル園に、子どもの興味や関心を大切にしたごっこ遊び、絵本読み、製作などを実践します。また、保育士の能力向上の研修や保育園の運営体制づくりなどを進めます。
JICAが保育園全体を対象としたプロジェクトを実施するのは初めてですが、保育・幼児教育分野へのJICAボランティア(青年海外協力隊など)の派遣では多くの地域で実績があります。
エジプトではこれまで20年にわたり、70人以上のJICAボランティアが保育・幼児教育分野で活動しており、パートナーシップに就学前教育が盛り込まれた背景には、その活動への評価があります。JICAボランティアの活動には、日本での保育士経験などを生かし、お遊戯や音楽などが取り入れられていました。
自由な遊びから学ぶことの大切さを実感
プロジェクトの一環として、エジプトの保育行政の担当者ら13人が昨年12月、鶴見大学短期大学部の協力で実施した日本での研修に参加し、保育現場も視察しました。
参加者は、子どもたちが遊ぶ姿を見ながら「日本の保育士は専門的な教育を受けているので、例えば、子どもたちが喧嘩したときも上手に介入し、自主性や個性を尊重し理解して子どもを支援している」と語ります。
また、「連絡帳などを活用し、保育士と保護者との連携がうまく取れている」など、エジプトとの違いを指摘。保育士の専門性を高める研修を実施したいなどの意見が上がりました。
日本で実際に見て感じたことがエジプトの保育現場で具体的に反映されるよう、プロジェクトでは今後、専門家と研修を受けた行政担当者が一緒になって保育の質向上を目指します。