2023-02-01 京都大学
いもち病は、イネの最重要病害の一つです。遺伝学とゲノム解読を駆使して、いもち病の発生を抑えるイネ抵抗性遺伝子を新たに発見しました。2種のイネを交雑して作った様々な遺伝子組成の子孫の集団と、2種のいもち病菌を交雑して作った様々な遺伝子組成の子孫の集団を用意してゲノム解読を行い、いもち病菌のイネへの感染試験を行い、イネの遺伝子といもち病の遺伝子(遺伝子対遺伝子)の特定の組合せによって抵抗性がおこる仕組みを調べました。結果、イネのPiks抵抗性遺伝子といもち病菌のAVR-Mgk1遺伝子を新たに見つけました。Piksタンパク質は、AVR-Mgk1タンパク質に直接結合して抵抗性を誘導します。ゲノム解読による「遺伝子対遺伝子」作用解明の手法は、様々な生物間相互作用を解明する上で有用な方法です。
本研究は、杉原優 農学研究科博士課程学生、寺内良平 同教授、藤﨑恒喜 岩手生物工学研究センター主任研究員ら、神戸大学、英国のセインズべりー研究所等の研究者の共同成果です。
本研究成果は、2023年1月19日に、国際学術誌「PLOS Biology」にオンライン掲載されました。
研究者のコメント
「近年の生物学は、注目した遺伝子を破壊したり変更した時に生物にどのような影響が現れるかを調べる『逆遺伝学』が流行です。本研究は、かけ合わせ実験により生物の性質の違いがどのような遺伝変異に原因するのかを調べる『順遺伝学』とゲノム解読を合体することにより、画期的な発見に至りました。相互作用している様々な生物種に対して今回用いた手法を適用することにより、今後さまざまな『遺伝子対遺伝子』相互作用を明らかにすることができると考えています。」(寺内良平)
研究者情報
研究者名:寺内 良平