アデリーペンギンが互いに行動を調節しながら群れを維持する様子を明らかに

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2023-12-26 総合研究大学院大学,国立極地研究所

近年バイオロギングの手法によって、動物の個体の行動が詳細に追跡できるようになりましたが、群れを維持するための個体同士の相互作用については未だに研究が進んでいません。本研究では、営巣地から海へ移動するアデリーペンギンの群れの複数個体の行動をバイオロギング手法によって記録しました。得られた移動経路や行動の記録を詳細に解析することで、ペンギンが休息のタイミングを互いに調節しあうことで移動速度を同調させ、群れを維持し続けることを明らかにしました。これらの結果はペンギンにおける群れの機能を明らかにする上で重要な知見です。

研究の成果

多くの動物は、同じ種の個体同士で群れを作ることが知られています。群れをいつ、どのように作り、維持しているのかを理解することは、群れの機能を考える上で重要です。近年、動物に行動記録計を取り付けるバイオロギングの手法によって、個体の移動経路や行動が詳細に追跡できるようになりましたが、群れの中にいる個体同士の相互作用を明らかにした研究は、霊長類など社会性の高い動物群に限られていました。南極で繁殖するアデリーペンギン(写真1)では、営巣地周辺や採餌場所である海などにおいて、同種同士で集まって群れを作る様子がこれまで観察されてきました。一方、このような群れがどのくらいの時間、またどうやって維持されているのか、個体同士の相互作用を明らかにした研究はありませんでした。

本研究では、抱卵期のペンギンにGPSや加速度の行動記録計を取り付け、営巣地から約40km離れた海氷縁まで移動する間の14個体から記録を取得し、そのうち3つグループの中にいた計7個体のペンギンの行動を調べました(図1a)。同じグループにいる個体は、約40kmの移動中、平均17時間に渡って互いに移動速度を同調させて群れを維持し続けていました(図1b)。さらに、移動速度の同調には互いの休息のタイミングを合わせることが重要であり、グループの中での先頭個体や休息を開始する個体は頻繁に入れ替わることがわかりました(図2)。これらの結果は、長距離を移動中のペンギンが互いに行動を調節しあって群れを維持していることを示しています。このような群れの維持の仕組みは一部の個体がリーダーになる霊長類の群れとは顕著に異なっており、ペンギンの群れがゆるやかな個体間の関係によって形成されていることを示唆する点で重要です。

今後はより多くの個体を同時に追跡することにより、群れの形成がペンギンにどのような利益をもたらしているのか、例えば効率的な餌場の発見に寄与するかなどを検証したいと考えています。

アデリーペンギンが互いに行動を調節しながら群れを維持する様子を明らかに

写真1:アデリーペンギン

図1:
(a)昭和基地近くのまめ島から海へエサを取りに出かけるペンギン14個体の移動軌跡。
(b)3つのグループ内でのペンギンの移動速度の時間的変化。互いの移動速度が顕著に同調している。

図2:コロニーから海氷上を移動して海に到着するまでの間、記録計を着けた個体のうちどちらが先頭の位置にいたかを示す図。3つのグループのそれぞれの中で、先頭の位置にいた個体が頻繁に入れ替わっている。

著者情報

今木俊貴(総合研究大学院大学・複合科学研究科極域科学専攻・5年一貫制博士課程2年)
國分亙彦 助教(総合研究大学院大学 / 国立極地研究所・生物圏研究グループ)
塩見こずえ 助教(東北大学・学際科学フロンティア研究所)
高橋晃周 教授(総合研究大学院大学 / 国立極地研究所・生物圏研究グループ)

論文情報

論文名:Speed consensus and behavioural coordination of Adélie penguins traveling on sea ice in groups
掲載誌:Animal Behaviour
DOI:
https://doi.org/10.1016/j.anbehav.2023.11.014

研究サポート

本研究はJSPS科研費(16H06541, 17H05983, 22K21355)の助成を受けて行われました。また、現地調査は第58次および第59次南極地域観測隊の支援により行われました。

お問い合わせ先

研究内容に関すること
今木俊貴(総合研究大学院大学・複合科学研究科極域科学専攻・5年一貫制博士課程2年)
高橋晃周 教授(総合研究大学院大学・先端学術院極域科学コース/国立極地研究所)

報道担当
国立大学法人 総合研究大学院大学
総合企画課 広報社会連携係

生物環境工学
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