2024-04-04 京都大学
私たちヒトを含む脊椎動物は、脳や目・鼻などの感覚器官が集中した「頭部(あたま)」と肛門より後方に位置する「尾部(しっぽ)」をもちます。この頭部と尾部はともに、脊椎動物の進化の過程で獲得されましたが、これは、それぞれ「神経堤細胞」と「神経中胚葉前駆細胞」と呼ばれる細胞集団の出現と深く関係していると考えられています。神経堤細胞と神経中胚葉前駆細胞がどのように出現し、どのような過程を経て進化してきたのかを知ることは、脊椎動物の起源と進化を理解するうえで重要です。
石田祐 理学研究科博士課程学生と佐藤ゆたか 同准教授は、脊椎動物にもっとも近縁な無脊椎動物であるホヤの胚が、脊椎動物の神経堤細胞と神経中胚葉前駆細胞の両方の性質をそなえた細胞をもつことを見出しました。本研究成果は、頭部をつくり出す神経堤細胞と尾部をつくり出す神経中胚葉前駆細胞が進化的にはもともと一つの細胞集団であり、脊椎動物の系統において神経堤細胞と神経中胚葉前駆細胞へと分化した可能性を示しています。
本研究成果は、2024年4月2日に、国際学術誌「Nature Ecology & Evolution」にオンライン掲載されました。
本研究の概要図:神経堤細胞と神経中胚葉前駆細胞は胚発生中に生じる「脊椎動物らしさ」を作り出すために重要な細胞群である。本研究成果は、これら細胞群が脊椎動物の誕生以前にすでに一つの細胞群として存在していた可能性が高いことを示す。
研究者のコメント
「私たちヒトを含む脊椎動物のアイデンティティ(脊椎動物らしさ)をつくるものは何か?という問いを考えるために、一見『脊椎動物らしさ』をもたないホヤ(脊椎動物にもっとも近縁な無脊椎動物)を対象として研究をおこないました。古典的な手法と最新の解析とを組み合わせて、脊椎動物らしさを考えるうえでとても面白い結果が得られたと思っています。」(石田祐)
詳しい研究内容について
脊椎動物らしさをつくる細胞群の進化的起源―脊椎動物にもっとも近縁なホヤから探る―
研究者情報
研究者名:佐藤 ゆたか