薬剤設計を支援する解釈性の高いAI予測手法を開発 ~持続可能な創薬を目指した合理的分子設計に向けて~

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2024-04-05 東京工業大学,科学技術振興機構

薬剤設計を支援する解釈性の高いAI予測手法を開発 ~持続可能な創薬を目指した合理的分子設計に向けて~

ポイント
  • 低分子医薬品開発のためのAI化合物設計技術MMGXを開発
  • 異なる分子グラフ表現の組み合わせにより、AI予測結果に高い解釈性を付与
  • 薬剤設計の効率化によって医薬品開発を加速させるAI創薬の進展に期待

東京工業大学 情報理工学院 情報工学系の大上 雅史 准教授とKengkanna Apakorn(ケンカーンナー・アーパーコーン) 大学院生は、創薬における低分子化合物の物性や活性を予測する、新たなAI予測手法を開発した。

医薬品開発の加速を目指して、既知の実験データを活用して未知の物質の性質を予測する、人工知能(AI)を利用した計算技術が数多く研究されてきた。特に、近年の深層学習技術の発展により、こうしたAIによる予測の精度は格段に上がっている。しかしその予測に至った理由を考えるための情報は乏しく、予測結果の妥当性の判断は熟練した専門家の知識と経験に委ねられる傾向にあった。

大上 准教授らは、化合物の構造式をグラフで表現して処理するグラフニューラルネットワークに着目した。そのうえで、原子と結合の関係を表現する一般的なグラフと、化合物の複数の原子や結合(部分構造)を1つのノードに縮約するグラフ表現を組み合わせて、グラフニューラルネットワークの一種であるグラフアテンションネットワーク構造によって学習するMMGX(Multiple Molecular Graph eXplainable discovery)という予測手法を提案した。この手法により、化合物の物性や活性を高精度に予測すると同時に、アテンション機構を用いて部分構造表現から算出される値によって、「どの部分に着目してその予測結果としたのか」という情報を得ることができるようになった。MMGXによる化合物の予測と解釈は、AIによって医薬品開発を加速させるAI創薬の進展に大きく貢献する。この研究成果は2024年4月5日(現地時間)に英科学誌「Communications Chemistry」でオンライン公開される。

本研究は以下の事業の支援を受けて実施された。

  • 科学技術振興機構(JST) 創発的研究支援事業「マルチモダリティ創薬を拓くインフォマティクス基盤」(JPMJFR216J)
  • 日本学術振興会(JSPS) 科学研究費助成事業 学術変革領域研究(A)計画研究「天然物が織り成す化合物潜在空間が拓く生物活性分子デザイン」(JP23H04880)
  • 日本学術振興会(JSPS) 科学研究費助成事業 学術変革領域研究(A)計画研究「bRO5化合物の潜在空間構築と応用のための情報科学」(JP23H04887)
  • 日本医療研究開発機構(AMED) 生命科学・創薬研究支援基盤事業(BINDS)(JP23ama121026)
<プレスリリース資料>
<論文タイトル>
“Enhancing property and activity prediction and interpretation using multiple molecular graph representations with MMGX”
DOI:10.1038/s42004-024-01155-w
<お問い合わせ先>

<研究に関すること>
大上 雅史(オオウエ マサヒト)
東京工業大学 情報理工学院 情報工学系 准教授

<JST事業に関すること>
東出 学信(ヒガシデ タカノブ)
科学技術振興機構 創発的研究推進部

<報道担当>
東京工業大学 総務部 広報課
科学技術振興機構 広報課

有機化学・薬学
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