2018-04-02 ライフサイエンス統合データベースセンター(DBCLS),遺伝学研究所 比較ゲノム解析研究室・先端ゲノミクス推進センター
Construction of a simple evaluation system for the intestinal absorption of an orally administered medicine using Bombyx mori larvae
Fumika Ichino, Hidemasa Bono, Takeru Nakazato, Atsushi Toyoda, Asao Fujiyama, Kikuo Iwabuchi, Ryoichi Sato, Hiroko Tabunoki
Drug Discoveries & Therapeutics, 12(1) 7-15, 2018 DOI:10.5582/ddt.2018.01004
ヒトの腸管吸収はヒト結腸癌由来の細胞株Caco-2細胞や腸灌流、哺乳類モデルを用いて見積もられていますが、これらの系にはその能力において限界がありました。マウスやラットなどの実験動物によるin vivoの評価系には倫理的な問題があり、また創薬段階における大規模な薬剤スクリーニングが困難となっていました。そこで、東京農工大学農学部 天竺桂弘子講師を中心とするグループは、薬剤腸管吸収の評価にカイコガ(Bombyx mori)幼虫を用いる手法を提案し、さらに経口投与による腸管透過性を評価する系を開発しました。
遺伝学研究所 比較ゲノム解析研究室 豊田敦特任教授、同研究所先端ゲノミクス推進センター 藤山秋佐夫特任教授はカイコ中腸のトランスクリプトーム配列解読を行いました。ライフサイエンス統合データベースセンター(DBCLS) 坊農秀雅特任准教授、仲里猛留特任助教はそのカイコ中腸の遺伝子発現データ解析を行い、公共遺伝子発現データセットから得たCaco-2細胞ならびにヒト小腸の遺伝子発現データとの比較トランスクリプトーム解析をおこなうことで本研究に貢献しました。
本研究は、国立遺伝学研究所が有する遺伝研スーパーコンピュータシステムを利用し、また国立遺伝学研究所公募型共同研究 NIG-JOINT (2014-A171 & 2015-A155)の支援を受けました。
図:腸管透過性のモデル系の評価とカイコガ幼虫の内部構造。体内の大部分が中腸(Midgut)によって占められており(緑色)、それらは血リンパ(Hemolymph)によって取り囲まれている(黄色)。