2022-06-07 東京大学医学部附属病院
乳がんは、現在日本では生涯で9人に1人の女性がかかる増加傾向の悪性腫瘍です。欧米ではBMIが大きいと閉経前に乳がんにかかるリスクが低いとされる一方、日本を含む東アジアではその関連性が不明とされ、むしろリスクの高い可能性が指摘されていました。 この度、東京大学大学院医学系研究科の小西孝明(医学博士課程)、田辺真彦准教授、康永秀生教授、瀬戸泰之教授らの研究グループは、国内の大規模医療データベースを用いてBMIと乳がん発生との関連を調査しました。45歳未満の女性約80万人のデータを解析した結果、BMIが22 kg/m2以上であると乳がんにかかるリスクが低く、欧米と同様の関連を持つことを初めて示しました。
欧米では70歳代で最も乳がんが好発する一方、日本など東アジアでは40歳代以降は横ばいあるいは減少することが知られていました。今回の研究の結果から、その違いは日本など東アジアでは肥満者が少ないことと関連していると推察されます。このため、BMI分布を考慮すると、日本では40歳代を中心に若年からの乳がん検診の意義がより大きい可能性があります。また、BMIと乳がんリスクとの人種を問わない関連性は、未だ不明な乳がん発生のしくみの解明に寄与すると考えられます。
本研究成果は、6月4日に米国医学雑誌「Breast Cancer Research and Treatment」のオンライン版に掲載されました。なお本研究は、厚生労働行政推進調査事業費補助金・政策科学総合研究事業(政策科学推進研究事業)「診療現場の実態に即した医療ビッグデータ(NDB等)を利活用できる人材育成促進に資するための研究」(課題番号 21AA2007 研究代表 康永秀生)の支援により行われました。