世界初、NASHに対するデジタル療法の効果を臨床試験で確認

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2023-01-24 東京大学医学部附属病院

肥満を背景に発症するNASHは国内に200万人程度(予備軍は推定1,000万人以上)存在すると考えられていますが、現状確立された治療法がなく、減量のための栄養指導や医師からの運動の励行など個々の施設の取り組みにとどまっています。

近年、デジタル療法への関心が高まっており、海外では2010年代より糖尿病などを対象とした治療用アプリが保険収載された事例が出てきました。日本でも、2020年にニコチン依存症の治療用アプリが世界初の保険収載例となり、2022年には高血圧の治療用アプリが保険収載されました。薬などと同様に医師が”処方”するスマホアプリを用いたデジタル療法が「標準治療」として認可されており、今後も様々な疾患に対する治療用アプリが登場することが期待されています。

東京大学医学部附属病院 検査部の佐藤雅哉 講師(消化器内科医)、消化器内科の中塚拓馬 助教、建石良介 講師、藤城光弘 教授、小池和彦 東京大学名誉教授らの研究グループは、疾患治療用プログラム医療機器(治療アプリ®)の開発を手がける株式会社CureAppと共同開発したNASH治療用アプリを用いた探索的臨床試験を行いました。この治療用アプリは個々の患者に最適化された治療ガイダンスを提供し、患者の認知と行動の改善を通じた減量を達成することを目的に開発されました。治療用アプリを用いた48週間の介入により、平均8.3%の体重減少が達成され(NASH診療ガイドラインでは体重の7%の減量が推奨されています)、肝組織の脂肪化や炎症、風船様変性から成る病理学的スコア(NAS:NAFLD activity score)が試験開始時に比べて有意な改善を示しました。試験前後のNASは、過去の研究における経過観察群のデータを元に設定した比較対照群との比較においても有意な改善を示しました。また、デジタル療法開始前に中等度以上の線維化を認めた患者の半数以上(58.3%)に線維化ステージの改善が認められました。

今回の研究結果により、現状確立された治療法の存在しないNASHに対してデジタル療法が有効であることが示されました。患者の認知と行動の改善を通じた減量による治療が達成されれば、NASHにより生じる肝硬変や肝癌のみでなく、肥満がリスクとなり生じる他の疾患の予防にもつながり、日本の医療費削減への貢献も期待されます。

本研究結果は学術誌「American Journal of Gastroenterology」の本掲載に先立ち、2023年1月20日にオンライン版にて公開されました。

詳しい資料は≫

医療・健康
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