糖尿病患者における厳格な血糖・血圧管理の効果が、居住形態によって異なることが明らかに

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2024-07-03 京都大学

清原貫太 医学部学生、井上浩輔 白眉センター/医学研究科准教授、近藤尚己 医学研究科教授、石見拓 同教授らの研究グループは、糖尿病領域の大規模ランダム化比較試験のデータを用いて、糖尿病患者における厳格な血糖・血圧管理の治療効果が居住形態(独居か否か)によって異なることを明らかにしました。

これまでの研究により、心血管疾患(CVD)の発症には居住形態をはじめとした社会的要因が関与していることが指摘されてきました。井上教授らが2022年に発表した研究では、非糖尿病患者において厳格な血圧コントロールの治療効果が居住形態(独居か否か)によって異なることが示されました。一方、糖尿病患者に対するエビデンスは皆無であり、とりわけ厳格な血糖管理・血圧管理の両方が施行された際に居住形態がどの程度影響するかについては明らかになっていませんでした。そこで本研究では、ACCORD-BP試験というランダム化比較試験の参加者を対象とし、糖尿病患者において厳格な血糖・血圧コントロールの治療効果が居住形態によって異なるかを検討しました。その結果、他者と暮らす患者では、標準治療を行った場合と比較して厳格な血糖・血圧管理を行った場合のCVD発症リスクが0.65倍であった一方で、独居患者では、厳格な治療と標準治療の間でCVD発症リスクに違いが認められませんでした。

本研究結果は、糖尿病患者の治療において、臨床的な情報のみならず居住形態など社会的要因にも着目する必要を示唆します。また、居住環境は国や地域の文化と強く結びついているため、米国のデータで得られた本知見が日本にどの程度一般化できるかについては、さらなる研究による検討が求められます。

本研究成果は、2024年6月27日に、国際学術誌「Journal of American Heart Association」に掲載されました。

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他者と暮らす患者では、標準治療を行った場合と比較して厳格な血糖・血圧管理を行った場合のCVD発症リスクがハザード比0.65と低いことが示された。一方で、独居患者では、厳格な治療と標準治療の間でCVD発症リスクに違いが認められなかった(ハザード比 0.96)。

研究者のコメント

「本研究は、清原(筆頭著者)が医学生として病院実習を行う中で、家族や社会の支えなしでは、治療やケアが十分に成立しないと感じ、居住形態が治療効果に与える影響に興味を持ったことから始まりました。本研究の結果を通じて、居住形態などの社会的背景を考慮した治療が広まることを願っています。」

詳しい研究内容について

糖尿病患者における厳格な血糖・血圧管理の効果が、居住形態によって異なることが明らかに

研究者情報

研究者名:井上 浩輔
研究者名:近藤 尚己
研究者名:石見 拓

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