2024-07-17 京都大学
寄生生物はしばしば自らの利益のために、宿主の行動を操作します。この行動操作は、自然界の捕食―被食関係を改変し、結果、大きなエネルギー流を駆動することが知られています。このような寄生者介在型のエネルギー流は、複数の寄生者種と宿主種によって維持されることが明らかになりつつありますが、多様な宿主―寄生者関係が、エネルギー流の季節性をどのように規定するのかは未解明でした。
朝倉日向子 理学研究科修士課程学生、佐藤拓哉 生態学研究センター准教授、岸田治 北海道大学准教授らの研究グループは、系統の異なるハリガネムシと陸生昆虫宿主の寄生関係が、エネルギー流に複数の季節的経路をもたらすことを示しました。本研究で明らかになった異なる宿主―寄生者関係が同所的に維持されることによる影響は、他の生態系や宿主―寄生者関係においても普遍的に見られると考えられ、寄生生物の役割の正しい理解に、宿主―寄生者関係の多様性を認識する必要があることを示しています。
本研究成果は、2024年7月17日に、国際学術誌「Biology letters」にオンライン掲載されました。
本研究で観察された事象。春にはGordionus属のハリガネムシが地表徘徊性甲虫を操作して、サケ科魚類に餌資源をもたらす一方で、秋にはGordius属のハリガネムシが直翅類を操作してサケ科魚類に餌資源をもたらす。
研究者のコメント
「これまでの研究では、一種の寄生生物や種や属がまとまった大きな分類群の寄生生物の宿主操作について、群集・生態系レベルまで波及する影響が調べられてきました。本研究で、そういった特定の寄生生物による宿主操作の影響についての研究と、宿主や寄生者の多様性についての研究を繋げる視点を提供でき、嬉しく思います。」(朝倉日向子)
詳しい研究内容について
季節的に生態系をつなぐ2つの寄生関係―2属のハリガネムシが春と秋に宿主操作する―
研究者情報
研究者名:佐藤 拓哉