2024-10-30 京都大学
井上浩輔 白眉センター/医学研究科准教授、近藤尚己 医学研究科教授、古川壽亮 成長戦略本部教授、安富元彦 米国ハーバード大学(Harvard University)博士課程学生らの研究グループは、これまでに出版された医学論文情報を検索し、因果効果の異質性を調べるためにどのような機械学習手法が使われているのかを明らかにしました。
機械学習手法の発展に伴い、治療効果が特定のグループでどのように異なっているのか(因果効果の異質性)を評価する試みが広まっています。異質性を理解することで、高い治療効果が予想されるグループに限定して治療を行うなど、個別化医療のさらなる発展が期待されます。しかし、多くの機械学習手法が利用可能となった現在、各手法の特徴や利点・限界、実際の研究で利用される頻度などを網羅的に検討した研究はありませんでした。本研究では、ランダム化比較試験のデータに対して機械学習手法を用いて異質性を検討した臨床論文を対象とし、スコーピングレビューを行いました。
レビューの結果、32報の論文が特定され、応用領域としては循環器、集中治療を中心に、精神、呼吸器、社会学など多岐に渡っていました。さらに、各論文で応用されていた各機械学習手法の概要・プログラミングコードも掲載しており、臨床研究者が今後異質性の評価を行う際に参考にすべきレビュー論文となることが期待されます。
本研究成果は、2024年9月19日に、国際学術誌「Journal of Clinical Epidemiology」にオンライン掲載されました。
研究者のコメント
「機械学習手法は現在急速に発展していますが、これらは数理的な土台に基づいており、臨床研究者・疫学者が手法を完全に理解した上で正しい手法を選択することはときに困難です。本研究は、実際に手法を利用する研究者の目線に立ち、頻繁に用いられている機械学習手法は何なのか、それぞれの手法の特徴は何なのか、という疑問に答えるべく始まりました。本文中で各手法の概要を説明している部分では、統計を専門とする共著者と相談を重ね、臨床研究者・疫学者が理解しやすいような表現を心がけています。因果効果の異質性の研究の発展に貢献できるようなレビューとなれば幸いです。」
詳しい研究内容について
機械学習を用いた因果効果の異質性のレビュー―医学研究での効果的な応用に向けて―
研究者情報
研究者名:井上 浩輔
研究者名:近藤 尚己
研究者名:古川 壽亮