日本初、遺伝性脳卒中や若年性認知症の原因となる CADASIL (カダシル) の専門外来を開設

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2022-11-01 国立循環器病研究センター

国立循環器病研究センター(大阪府吹田市、理事長:大津欣也、略称:国循)の脳神経内科部 (部長:猪原匡史)では、2022年11月2日から毎週水曜日午後に、CADASIL(皮質下梗塞と白質脳症を伴う常染色体優性脳動脈症)患者を対象とした、日本初のCADASIL外来を開設することになりました。CADASILは非常に頻度の少ない希少難病であるため、これまでCADASIL患者が地域の中核病院を受診しても、豊富な診療経験を有する医師の診察を受けることが極めて困難でした。
しかしながら、国立循環器病研究センター・脳神経内科には、2022年10月時点 で約100名のCADASIL患者が定期的に来院されており、世界でも有数のCADASIL診療実績を有しております。これまでの診療経験を強みとして、より正確で適切なCADASIL診療が可能になりましたので、この度、日本全国のCADASIL患者の受診を容易とするため、日本初のCADASIL外来を開設するに至りました。

■背景

CADASILは、NOTCH3遺伝子の病原性バリアント*1が原因となり、常染色体顕性遺伝(優性遺伝)形式で発症し、大脳白質病変を特徴とする遺伝性脳小血管病です (厚生労働省指定難病124)。日本国内には1,200人ほどのCADASIL患者が存在すると推定されてきましたが、最近のゲノム研究*2の進歩の結果、数万人以上のCADASIL患者が日本国内に存在する可能性が指摘されるようになりました。

CADASIL患者は、典型的には20〜30歳頃に片頭痛を、30〜40歳頃に脳卒中 (脳梗塞や脳出血) を、40〜50歳頃に認知症を発症し、脳梗塞を繰り返すと60歳前後で寝たきりとなり、65〜70歳前後で死亡することが多いと考えられてきました。しかしながら、日本国内には10歳代で脳卒中を発症したCADASIL患者の報告がある一方で、80歳代で認知症を発症していないCADASIL患者も少なからず報告されています。CADASILの原因となるNOTCH3遺伝子の病原性バリアントは世界中で300種類以上の報告がありますが、バリアントの種類によってCADASILの経過が異なる可能性も指摘されています。したがって、CADASIL患者の経過は患者ごとに大きく異なるため、遺伝性疾患であるにもかかわらず*3、画一的な診療は不可能です。また、診療ガイドラインも存在しないため、CADASIL患者への診療は、現在施設ごとに大きく異なっています。

■CADASIL外来について

CADASIL外来では、豊富なCADASIL診療経験を有する医師 (主担当:脳神経内科・齊藤聡) が診療を担当します。他院でCADASILと診断された方はもちろん、CADASILが疑われているものの、未だ診断の確定に至っていない方、あるいは若年性に上記症状をお持ちの方の受診も可能です。受診には当院宛ての紹介状が必要となり、当センターの専門医療連携室からの予約を通じて受診頂けます。原則的に保険診療の扱いになります。

CADASIL外来では、最新の知見に基づいた治療を提供することはもちろん、研究段階の治療に参加する治験や臨床研究への紹介も可能です。なお、当センターでは現在、世界初のCADASIL患者に対する医師主導治験AMCAD治験をAMED難治性疾患実用化研究事業より支援を受けて実施しています。CADASIL外来から日本唯一のCADASIL患者会 (CADASIL友の会) への紹介や、患者さんの血縁者への影響について、遺伝カウンセリングの紹介*4も可能です。

■今後の展望と課題

現在、国立循環器病研究センター脳神経内科では豊富な症例診療経験の強みを活かし、日本のCADASIL患者の実態解明に努めるとともに、新規治療薬の開発を目指しています。今後もCADASIL友の会と連携しながら、最新の知見を広く公表していきたいと考えています。

*1バリアントとは、一般的な基準ゲノム配列とくらべて変化のある塩基配列のことです。従来、(病的)変異と呼ばれていた疾患の発症に大きく関わるバリアントは、最近では病的バリアントと称されることが多くなってきています。

*2ゲノム研究とは、最先端の遺伝子解析装置を用いて、多数の被験者の遺伝子を解析し、遺伝子のバリアントの種類とその頻度を調べる研究のことです。最新のゲノム研究によって、各種の遺伝性疾患の頻度が明らかになってきています。

*3単一の遺伝子の異常に起因する遺伝性疾患では、臨床経過 (症状の進行の速度など) が均一であることが多いのですが、CADASILは病気の個人差が比較的大きい遺伝性疾患です。

*4遺伝カウンセリングでは、専門医(臨床遺伝専門医)が遺伝カウンセラー(認定遺伝カウンセラー)とともに、患者さんあるいは患者さんの親族の遺伝に関するいろいろな悩みについて、遺伝学や遺伝医療の情報をもとにご説明し、悩みの解決に向けて一緒に考えていきます。

報道関係の方からのお問い合わせ
国立循環器病研究センター企画経営部広報企画室

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