2023-06-06 九州大学
ポイント
- エコチル調査の全国10万組の親子のデータを用いて、エコチル調査九州大学サブユニットセンターは、胎児期の5つの金属(鉛、カドミウム、水銀、セレン、マンガン)へのばく露[※1]と3歳までに診断された先天性腎尿路異常(Congenital anomalies of the kidney and urinary tract: CAKUT)の関連を調べました。
- 妊娠中の母体血のマンガン濃度が高いことと、他の臓器の形態異常を伴うタイプ(複雑型)のCAKUTのリスク減少に関連があることが明らかになりました。
- 本研究は環境省の予算により実施しました。本研究の内容は、すべて著者の意見であり、環境省及び国立環境研究所の見解ではありません。
概要
エコチル調査福岡ユニットセンター(九州大学小児科)医員の岩屋らの研究チームは、 エコチル調査の約10万組の親子のデータを使用して、胎児期の5つの金属(鉛、カドミウム、水銀、セレン、マンガン)のばく露と3歳までに診断された先天性腎尿路異常(Congenital anomalies of the kidney and urinary tract: CAKUT)の関連について解析しました。その結果、妊娠中の母体血のマンガン濃度が高いことと、他の臓器の形態異常を伴うタイプ(複雑型)のCAKUTのリスク減少に関連があることが明らかになりました。なお、CAKUTの診断方法が明確に定められていない、全ての参加者に精密な検査を行っているわけではない、母体血の採取時期にばらつきがあるなどの様々な制約があり、更なる詳細な調査が必要です。
本研究の成果は、令和5年5月23日付で、自然科学分野の学術誌『Science of the Total Environment』に掲載されました。
※本研究の内容は、すべて著者の意見であり、環境省及び国立環境研究所の見解ではありません。
用語解説
[※1] ばく露:私たちが化学物質などの環境にさらされることを言います。身体の表面から中に入ってくることは吸収などと呼び、ばく露とは区別しています。
論文情報
題名(英語):Prenatal metal levels and congenital anomalies of the kidney and urinary tract: The Japan Environment and Children’s Study
著者名(英語):Yuka Iwaya1, Masafumi Sanefuji1,2, Kei Nishiyama1, Yuri Sonoda1,3, Norio Hamada3,4, Reiko Suga5, Masayuki Ochiai1,3, Masayuki Shimono5,6, Koichi Kusuhara5,6, Shouichi Ohga1,3, and the Japan Environment and Children’s Study Group
岩屋友香1、實藤雅文1,2、西山 慶1、園田有里1,3、濱田律雄3,4、菅 礼子5、落合正行1,3、下野昌幸5,6、楠原浩一5,6、大賀正一1,3、JECSグループ7
1九州大学小児科、2佐賀大学小児科、3九州大学環境発達医学研究センター、4九州大学産婦人科、5エコチル調査産業医科大学サブユニットセンター、6産業医科大学小児科、7グループ:エコチル調査運営委員長(研究代表者)、コアセンター長、メディカルサポートセンター代表、各ユニットセンターから構成
掲載誌:Science of the Total Environment
DOI: 10.1016/j.scitotenv.2023.164356
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研究に関するお問い合わせ先
九州大学小児科、九州大学エコチル調査サブユニットセンター
医員 岩屋友香(現、福岡市立こども病院)
佐賀大学小児科、九州大学エコチル調査サブユニットセンター
准教授 實藤雅文