2024-01-12 京都大学
細胞は、接着装置を介して細胞の中の力を細胞外の構造に伝えます。アクチン細胞骨格は、細胞内で力を発生しながら動くダイナミックな構造体です。接着装置は多様なタンパク質により構成されますが、動き続けるアクチン構造の動力を、どのように細胞外の構造に伝達するのかはわかっていませんでした。
山城佐和子 生命科学研究科講師、渡邊直樹 同教授らは、Dimitrios Vavylonis米国リーハイ大学教授らとの共同研究により、架橋タンパク質が流動するアクチン線維と細胞の足場(基質)の間を繋ぐ過程で、流動力に引っ張られてタンパク質の一部がほどける(アンフォールドする)ことで、流動力を足場に伝達することを明らかにしました。私たちの生活するスケールでは、動力は歯車などの固い部品によって伝達されます。一方、細胞の中では、伸縮する柔らかい分子が力を伝えていました。もしタンパク質が人間の大きさとすると、流動するアクチン線維は時速50 kmで走る電車に相当します。本研究では、タンパク質がゴム人間のように伸びながら電車を掴んで地面に力を伝える新しい力伝達様式を明らかにしました。
本研究成果は、2023年12月20日に、国際学術誌「Nature Communications」にオンライン掲載されました。
研究者のコメント
「本研究の突破口は、引っ張られてほどけながら細胞内流動と足場をつなぐタリン分子の挙動を、自分の目で見つけたことでした。連結する分子の割合が非常に少ないため、研究を始めてしばらくは、タリンを細胞内1分子イメージングしても、どのように分子が流動と足場を繋ぐのか不明でした。そこで顕微鏡の時空間の解像度を上げて、『絶対に何かある!』と信じてモニターを凝視すると、撮影したばかりの生データから特徴的な挙動をする1分子シグナルを見つけました。この発見はタンパク質のメカニカル・アンフォールディングの新しい役割を提唱する重要な成果に繋がり、執念で観察することの大切さを実感しています。」
詳しい研究内容について
メカニカル・アンフォールディングが細胞内流動力を伝達する―走る電車の力を伝えるにはゴム人間が役に立つ―
研究者情報
研究者名:山城 佐和子
研究者名:渡邊 直樹