2024-02-09 京都大学
伏屋康寛 医学研究科特定助教、門場啓一郎 同博士課程学生、岩井一宏 同教授(プロボスト・理事・副学長)、森信暁雄 同教授らの研究グループは、寺尾知可史 理化学研究所チームリーダーの研究グループらと共に、直鎖状ユビキチン鎖(直鎖)を生成することで免疫細胞の活性化に重要な役割を果たす複合体ユビキチンリガーゼLUBACが、全身性エリテマトーデス(SLE)とシェーグレン症候群(SS)の発症に関わることを明らかにしました。
LUBACが特異的に生成する直鎖状ユビキチン鎖は免疫応答に中核的に機能するシグナル伝達系です。本研究グループは、LUBACのサブユニットであるHOIL-1Lの酵素活性を阻害することでLUBACの機能が亢進することを発見していました。今回の研究では、マウスにおいてHOIL-1L酵素欠損が直鎖状ユビキチン鎖の生成亢進を介してSLE及びSS様症状を発症すること、さらにヒトにおいてLUBAC活性を亢進させるHOIL-1L遺伝子の1塩基変異(SNV)が SLE患者群に有意に集積するSLEの疾患感受性遺伝子であることが同定されました。本成果は直鎖状ユビキチン鎖の生成亢進による炎症シグナルの活性化がSLEの発症に繋がる可能性を示すものであり、今後LUBACを標的としたSLE治療薬の開発が期待されます。
本研究成果は、2024年2月9日に、国際学術誌「JCI insight」に掲載されました。
LUBACユビキチンリガーゼ複合体は直鎖状ユビキチン鎖を生成することで免疫細胞の活性化に重要なNF-κBの活性化を引き起こします。HOIL-1Lの酵素活性が低下した場合、LUBACによるNF-κB活性化が過剰に亢進することで、Bリンパ球・Tリンパ球・マクロファージを始めとする各種免疫細胞が異常に活性化することがSLEの発症につながることを、見出しました。
研究者のコメント
「我々はLUBACによる直鎖状ユビキチン鎖生成を亢進させる方法を発見し、それを利用してLUBACの機能を亢進したマウスを作出して解析を進め、直鎖状ユビキチン鎖シグナルの亢進が、ヒトと同じくメス優位にシェーグレン症候群及びSLEに類似した症状を自然発症することを発見しました。さらに、1アミノ酸の変異でHOIL-1Lの酵素活性が消失することを見出していた知見をヒト遺伝学に応用し、ヒトにおいてもLUBACの機能亢進がSLEの発症に繋がることを見出しました。我々が基礎研究を通して発見した直鎖状ユビキチン鎖、LUBACが自己免疫疾患の発症に寄与することを明らかにすることができたことは医師免許を持つ我々にとっては望外な喜びです。本研究の成果はLUBAC阻害がヒトSLEの治療法に繋がる可能性を示していますので、我々の研究成果が今後SLEで苦しんでおられる患者さんに少しでも福音をもたらしてくれればと期待しております。」
詳しい研究内容について
自己免疫疾患の発症メカニズムの一端を解明―自己免疫疾患の新規治療ターゲットへ―
研究者情報
研究者名:伏屋 康寛
研究者名:岩井 一宏
研究者名:森信 暁雄