2024-02-15 京都大学
動物の顔は非常に複雑な形をしていますが、その大部分の形成は発生過程で一過的に現れる神経堤細胞と呼ばれる多分化能を持った細胞の集団に由来しています。咽頭弓と呼ばれる顔の原基の内部における神経堤細胞の初期の細胞分化と空間パターン形成はその後の顔の適切な構造形成に重要だと考えられますが、発生の早い時期に生じる現象である為、詳細な分子メカニズムの解析には技術的な難しさがありました。
瀬戸裕介 医生物学研究所助教(研究当時)、永樂元次 同教授、荻原龍馬 工学研究科修士課程学生らの研究グループは、ヒト多能性幹細胞から神経堤細胞を多く含む細胞凝集体を作製し、それを咽頭弓様の遺伝子発現パターンを有する細胞集団へと分化させる手法を確立しました。同細胞集団は、培養時に与えるシグナルに応じて将来の上顎・下顎原基様の細胞へと分化し、また一時的な下顎原基誘導シグナルの添加に応じて自発的にパターン形成をすることが明らかとなりました。本技術を活用することにより、ヒト咽頭級の初期パターニングの制御機構の解明につながることが期待できます。
本研究成果は、2024年2月14日に、国際学術誌「Nature Communications」にオンライン掲載されました。
研究者のコメント
「試験管内で細胞の性質を解析することを通じて生き物の発生過程についての考察を深めていくことは、基礎生命科学の発展はもとより、発生過程に端を発する疾患の病態形成過程の解明などにもつながっていく可能性があります。そういった意味で、新規の試験管内組織モデルの作製は、新たな発見を生み出していくための原動力となる重要な課題のひとつだと思います。」(瀬戸裕介)
詳しい研究内容について
ヒトES細胞から咽頭弓様の構造を形成―顔の初期発生過程の解明の為のモデルを作製―
研究者情報
研究者名:瀬戸 裕介
研究者名:永樂 元次