2024-04-05 大阪大学,科学技術振興機構
ポイント
- 厚みのある細胞や3D多細胞組織の内部を観察可能な超解像蛍光顕微法を開発。
- これまでの超解像顕微法は、焦点外からの背景光を多く生じる生体内部の観察には向かず、主に試料表面や薄い生体試料の観察で利用されていた。
- 生体により近い性質を持つ3D多細胞組織を利用する生物、医、薬学の幅広い研究に役立ち、顕微観察技術の進展にも貢献する成果。
大阪大学 大学院工学研究科の天満 健太 助教、桶谷 亮介 特任研究員(常勤)(研究当時/現:九州大学 理学研究院 助教)、藤田 克昌 教授らの研究グループは、同大学 産業科学研究所の永井 健治 教授、大学院医学系研究科の上西 達也 助教、大学院生命機能研究科 濱﨑 万穂 准教授、ドイツ・イエナ大学のRainer Heintzmann 教授らと共に、生体内部を観察できる新たな超解像顕微法を開発することに成功しました。従来の超解像顕微法の多くは、焦点外からの背景光が多く発生する生体内部の観察への利用は難しく、主に試料の表層付近や薄い生体試料の観察に用途を制限されてきました。
今回、本研究グループは、薄いシート状の照明と、光スイッチング蛍光たんぱく質を用いて選択的に発光領域を限定するシートアクティベーション型構造化照明顕微法(Selective plane activation structured illumination microscopy,SPA-SIM)を開発しました。この顕微法は、試料の発光を観察対象面に限定することで背景光の発生を抑制し、そこに縞状(しまじょう)の光を照明することで生体内部の超解像観察を可能とします。
本研究では、開発した技術を用いて、従来手法では観察の難しい立体的な形状の細胞スフェロイドの内部構造を超解像観察することに成功しました。本技術は単一細胞内部の詳細な観察が可能であるのみでなく、近年関心を集めている3D多細胞組織(スフェロイド、オルガノイド)の観察に利用可能です。これらの試料を用いた、生物、医、薬学研究への幅広い貢献が期待されます。
本研究成果は、英国科学誌「Nature Methods」に、2024年4月5日(金)(日本時間)に公開されます。
本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的研究推進事業 CREST(JPMJCR1925、JPMJCR15N3)、共創の場形成支援プログラム COI-NEXT(JPMJPF2009)、文部科学省 科学研究費助成事業 新学術領域研究(18H05410)、物質・デバイス領域共同研究拠点の支援を得て行われました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(1.26MB)
<論文タイトル>
- “Selective plane activation structured illumination microscopy”
- DOI:10.1038/s41592-024-02236-3
<お問い合わせ先>
<研究に関すること>
天満 健太(テンマ ケンタ)
大阪大学 大学院工学研究科 助教
藤田 克昌(フジタ カツマサ)
大阪大学 大学院工学研究科 教授
<JST事業に関すること>
保田 睦子(ヤスダ ムツコ)
科学技術振興機構 戦略研究推進部 ライフイノベーショングループ
<報道担当>
大阪大学 工学研究科 総務課 評価・広報係
大阪大学 産業科学研究所 広報室
大阪大学 大学院医学系研究科 広報室
科学技術振興機構 広報課