2024-04-16 医薬基盤・健康・栄養研究所
国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所創薬デザイン研究センター笠原勇矢副センター長は、大阪大学 大学院薬学研究科生物有機化学分野の小比賀聡教授、大学院生の小橋博斗さん(研究当時)、下條正仁准教授(研究当時)、永田龍特任准教授らのグループと、京都大学 大学院工学研究科 合成・生物化学専攻の森泰生教授らの研究グループとの共同研究で、肺がん等のがん細胞にその役割が不明ながら多く発現するカルシウム透過型TRPC3/C6チャネルに着目し、これを選択的に活性化する化合物L687の取得に成功しました。
様々なASOとL687を共に種々のがん細胞に添加したところ、ASOはがん細胞内に効率よく取り込まれ、ASOが標的とする遺伝子の発現を大きく抑制することを見出しました。ASOとL687を担がんマウスの腫瘍内に投与した実験でも同様の効果が認められました。
加えて、L687によるASOの細胞内取り込みの亢進にはTRPC3/C6チャネルを介した細胞内へのカルシウムの流入が必須であり、それにより、がん細胞が細胞外物質を飲食する作用を誘導することが示唆されました。結果として、細胞外のASOが細胞内に取り込まれることになります。
核酸医薬は、細胞内に移行する割合が極めて低いため、せっかくの核酸医薬の機能が細胞内で十分に発揮されず、その汎用性は大きく制限されていました。本研究成果により、核酸医薬(ASO)のがん細胞内への取り込みを促進する化合物が得られたことから、がん疾患を適応症とする核酸医薬の開発が大きく進展するものと期待されます。
研究成果は、国際科学誌Nucleic Acids Researchに、2024年4月16日午前0時5分 (協定世界時) にオンライン版で発表されました。https://doi.org/10.1093/nar/gkae245
詳細は、こちらをご覧ください。