リアルタイム神経解析・操作ツール開発~神経細胞のリアルタイムクローズドループ実験をより簡単に~

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2024-06-21 東京大学生産技術研究所

○発表のポイント:
◆フランス、日本、イタリアの研究チームが、神経細胞と人工細胞のバイオハイブリッド実験を簡素化する新ツール「BiœmuS(バイオエムス)」を開発。
◆BiœmuS(バイオエムス)は、低コストで柔軟性があり、神経ネットワークの動態を詳細に調査したりモデル化したりできる。
◆BiœmuSは、シンプルに低遅延・リアルタイムのクローズド(閉)ループ実験を実現。

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BiœmuS の 概略

○概要:
東京大学 生産技術研究所(兼務:同学 Beyond AI研究推進機構、兼担:同学 大学院工学系研究科化学生命工学専攻)の池内 与志穂 准教授、同学 大学院工学系研究科ドゥンキー 智也 博士課程学生、ボルドー大学(フランス)のロマン・ボボワ 博士課程学生(研究当時、現:東京大学 生産技術研究所 外国人特別研究員)、ジェレミー・シェスレ 博士課程学生(兼:東京大学 生産技術研究所 国際協力研究員)、ティモテ・レヴィ 教授、パスカル・ブランシュロー 教授、ジェノバ大学(イタリア)のミケラ・キアッパローネ 准教授らの研究チームは、神経細胞の活動をリアルタイムで解析して理解し、特定の神経活動パターンに応じた刺激を神経細胞に与えることで神経細胞を操作する、という一連の作業を簡単に行えるようなシステムを開発しました。この成果物を利用することによって神経細胞のリアルタイムクローズド(閉)ループ実験がより簡単に行えるようになります。

○発表内容:
現在、神経障害に対する有望なアプローチとしてエレクトロスーティクス(電気療法)の開発が進んでいます。生体由来の神経細胞と、電子機器上で生体を模倣した人工神経細胞のバイオハイブリッド実験は、次世代の神経プロステーシス(補綴)の開発に不可欠です。この目標に向けて、日本、フランス、イタリアの研究チームが神経と電子機器間における閉ループ相互作用実験を行うためのツール「BiœmuS」を開発しました(図1)。

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図1:BiœmuSを介したクローズドループ実験

本研究チームが開発した研究ツール「BiœmuS」は、低コストで柔軟性があり、リアルタイムで生体を模倣することが可能です。このシステムは、生体システムのリアルタイムエミュレーションを可能にし、バイオハイブリッド実験と、神経回路のモデル化を簡素化します。このシステムはコスト、柔軟性、使いやすさの面で優れています。
本研究では、一般的に使われている電極インターフェースと生体内および生体外の神経細胞を使用して、バイオハイブリッド実験の実現可能性を示しました。2つつなげた大脳オルガノイド(参照:プレスリリース「軸索で結合させた大脳オルガノイドは複雑な神経活動を示す――脳の発達と機能の解明に新たな手法を開発――」)の活動ダイナミクスを簡便にモデル化することができました。また、2つつなげた大脳オルガノイドのうち、片方から神経活動を計測し、その活動に応じた刺激をBiœmuSを介してもう片方のオルガノイドに与えるという閉ループ実験を行うことができました。このシステムは、生体由来の神経ネットワークと電子機器群のコミュニケーションを現実と同じ時間スケールで可能にすることを実証しました。

〇関連情報:
「軸索で結合させた大脳オルガノイドは複雑な神経活動を示す――脳の発達と機能の解明に新たな手法を開発――」(2024/4/11)

○発表者・研究者等情報:
東京大学
生産技術研究所
池内 与志穂 准教授
兼:東京大学 Beyond AI研究推進機構
兼:東京大学 大学院工学系研究科 化学生命工学専攻
兼:東京大学 生産技術研究所 附属LIMMS/CNRS-IIS

大学院工学系研究科 化学生命工学専攻
ドゥンキー 智也 博士課程

ボルドー大学
IMSラボラトリー
ティモテ・レヴィ 教授
兼:東京大学 生産技術研究所 附属LIMMS/CNRS-IIS
ロマン・ボボワ 博士課程学生(研究当時)
現:東京大学 生産技術研究所 外国人特別研究員
ジェレミー・シェスレ 博士課程学生
兼:東京大学 生産技術研究所 国際協力研究員
ファラード・コイラテ 博士課程学生
パスカル・ブランシュロー 教授

ジェノバ大学
大学院医学系研究科・医学部
ミケラ・キアッパローネ 准教授
ジュゼッペ・デベヌト 博士課程学生
マルタ・カレ 博士課程学生

○論文情報:
〈雑誌名〉Nature Communications
〈題名〉BiœmuS: A new tool for neurological disorders studies through real-time emulation and hybridization using biomimetic Spiking Neural Network
〈著者名〉Romain Beaubois, Jérémy Cheslet, Tomoya Dünki, Giuseppe De Venuto, Marta Care, Farad Khoyratee, Michela Chiappalone, Pascal Branchereau, Yoshiho Ikeuchi, Timothée Levi*
〈DOI〉10.1038/s41467-024-48905-x

○研究助成:
本研究は、Beyond AI研究推進機構、JSPS Core-to-Core プログラム(課題番号:JPJSCCA20190006)、科研費(課題番号:20K20643)、JST SPRING(課題番号:JPMJSP2108)、ANRIフェローシップ、AMED(課題番号:JP20gm1410001)などの支援により実施されました。

○問い合わせ先:
東京大学 生産技術研究所
准教授 池内 与志穂(いけうち よしほ)

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