2024-09-17 京都大学
ビタミンB1(VB1)、B2(VB2)、およびB6(VB6)(以下「ビタミンB」と表記)は、細胞内で様々な生体反応に関与する重要な必須微量栄養素です。ビタミンBが活性を有するには、リン酸エステルまたはヌクレオチドの形(以下「リン酸エステル体」)である必要がありますが、リン酸エステル体のままでは細胞膜を通過できません。そこでビタミンBは、膜輸送される前に一旦リン酸エステルが加水分解され、細胞内に取り込まれた後に再びリン酸エステル化されて、体内で利用されます。これまでに、リン酸エステル加水分解過程に亜鉛依存性酵素が関与していることが示唆されていましたが、正確な作用機序は明らかにされていませんでした。
この度、神戸大朋 生命科学研究科准教授、湯浅花 同修士課程学生(研究当時)、西野勝俊 同助教(現:東京工科大学講師)、永尾雅哉 同教授、木戸尊將 東京慈恵会医科大学講師、須賀万智 同教授、福渡努 滋賀県立大学教授らの研究チームは、培養細胞とラットを用いて、ビタミンBのリン酸エステル加水分解に4つの亜鉛依存性酵素が重要な役割を果たすこと、さらに、この加水分解活性が亜鉛栄養状態によって大きく影響されることを明らかにしました。これは、ビタミンB代謝に亜鉛が重要であることを明確に示した成果になります。
本研究成果は、2024年9月16日に、国際学術誌「The FASEB Journal」にオンライン掲載されました。
ビタミンBが細胞内に輸送されるメカニズム
研究者のコメント
「ヒト体内には、500種類を超える亜鉛依存性酵素が働いていると考えられています。これらの酵素は亜鉛欠乏時に一様に活性が低下するのではなく、活性が低下しやすい酵素としにくい酵素に分類できることがわかってきています。今回見出したALP、CD73、ENPP1、ENPP3は、亜鉛欠乏時に最も活性が低下しやすい酵素ですので、これら4つの酵素が関わるビタミンB代謝のような代謝系が亜鉛欠乏症の多様な症例に関わることが予想されます。今後も、ビタミンとミネラルという重要な生理活性物質の相互作用についての詳細を明らかにして、健康維持・増進に役立つ知見を提示したいと考えています。」
詳しい研究内容について
研究者情報
研究者名:神戸 大朋
研究者名:永尾 雅哉
書誌情報
【DOI】https://doi.org/10.1096/fj.202401207R
【書誌情報】
Hana Yuasa, Kiyoshi Miyazaki, Takamasa Kido, Katsutoshi Nishino, Miku Shiotsu, Tsutomu Fukuwatari, Machi Suka, Masaya Nagao, Taiho Kambe (2024). Rate of hydrolysis of the phosphate esters of B vitamins is reduced by zinc deficiency: In vitro and in vivo. The FASEB Journal, 38, 18, e70025.