細胞をグルグル回して、細胞核を動かす小さな力を測定 〜ピコニュートンレベルの力の測定に成功〜

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2024-10-17 国立遺伝学研究所

木村研究室・細胞建築研究室

私たちの体を構成する細胞には、遺伝情報を格納する「細胞核」という重要な構造があります。この細胞核は通常、細胞の中央付近に存在しています。このことは細胞内で核を中央に運び、維持するための力が働いていることを意味しますが、どのような仕組みで、どのくらいの大きさの力が働いているかは長年の謎でした。

今回、国立遺伝学研究所の木村暁教授らを中心とする研究グループは、この謎を解明する大きな一歩を踏み出しました。研究グループは、「遠心偏光顕微鏡(CPM)」という特殊な顕微鏡を使って、細胞を高速で回転するステージに設置して顕微鏡撮影を行うことで細胞核を中央に留めておく力を計測することに成功しました。

実験では、この回転操作によって細胞核に加わる遠心力を明らかにした上で、その遠心力をかけることにより細胞核を細胞の中央からずらすことに成功しました。この時の力の大きさとずれの大きさの関係を解析することで、通常、細胞内で核を中央に留めておく微小な力を計算できたのです。

細胞の内部は、様々なタンパク質などで混み合った状態です。その中で細胞核のような大きな構造体がどのように動けるのかは細胞生物学における重要な問題です。今回の研究は遠心顕微鏡というユニークな装置を使って、この問題を明らかにする重要な手がかりを提供しています。

本研究は、情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所の木村暁教授を中心として様々な研究機関に属する研究者が米国ウッズホール海洋生物学研究所(MBL)に滞在することで進展した国際共同研究です。

本研究は、MBLのWhitman fellowship、及び、科研費国際共同研究強化(B)(18KK0202)などによって支援されました。

細胞をグルグル回して、細胞核を動かす小さな力を測定 〜ピコニュートンレベルの力の測定に成功〜

図: 本研究の概要。[上段] 遠心偏光顕微鏡の外観(左)。この顕微鏡ではステージ部分(中)が回転することによって、ステージに設置された細胞(右の楕円)に遠心力が加わる。右の矢印はステージの回転の中心方向を表す。[下段] 実際に観察された線虫胚の様子。アスタリスク(*)が細胞核の位置を表し、当初細胞の中央に位置していた細胞核が、遠心力をかけることにより、ステージの回転の中心方向にずれているのがわかる。


Live-cell imaging under centrifugation characterized the cellular force for nuclear centration in the Caenorhabditis elegans embryo.

Makoto Goda, Michael Shribak, Zenki Ikeda, Naobumi Okada, Tomomi Tani, Gohta Goshima, Rudolf Oldenbourg, Akatsuki Kimura

Proceedings of the National Academy of Sciences (PNAS) (2024) 121 (43), e2402759121 DOI:10.1073/pnas.2402759121

プレスリリース資料

生物工学一般
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