研究成果に基づき生命の誕生と進化のストーリーを再現した全映像の完成
2019-06-05 国立遺伝学研究所,東京工業大学
東京工業大学地球生命研究所の主任研究者 丸山茂徳 特任教授(所属:理学院)および情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所の黒川顕 教授らの研究グループは、文部科学省科学研究費補助金・新学術領域研究「冥王代生命学の創成」(課題番号2605)において、これまで未解明の問題であった「地球と生命の起源」を解明する研究に取り組んできました。
2014年度から始まった本研究によって、丸山 特任教授らは、生命誕生の場および生命の起源、進化に関するこれまでの定説を覆す新たな仮説を提案してきました。この新仮説をわかりやすく専門外の方々に紹介することを目的として、「冥王代生命学の創成」研究チームは、有限会社ライブの上坂浩光氏とともに、動画「全地球史アトラス」を制作し、順次公開してきました。今回は、これまでに公開されたシリーズ(1~9章)に続く新シリーズとして、10、11、12章を公開します。動画「全地球史アトラス」は12章で完結となり、本公開によって、全シリーズをご覧いただくことが可能になります。
最新の研究成果と、新たな仮説が物語る地球と生命の歴史を、地球の誕生、生命の誕生、そして人類の誕生から地球に未来までの進化を含めてご覧いただけます。
本作品は、文部科学省科学研究費補助金・新学術領域研究「冥王代生命学の創成」(課題番号2605)の支援の下におこなった研究の成果を映像にしたものです。
全地球史アトラス
第1章:地球誕生
第2章:プレートテクトニクス
第3章:原始生命誕生
第4章:生命進化の第1ステージ
第5章:生命進化の第2ステージ
第6章:生命進化の第3ステージ
第7章:生命大進化の夜明け前
第8章:カンブリア紀の生命大進化
第9章:古生代
第10章:中生代から人類の誕生まで
第11章:人類代〜人類誕生と文明の構築
第12章:地球の未来
- 動画「全地球史アトラス」はこちらでご覧いただけます
図:動画「全地球史アトラス」トップページ(2019年5月24日現在)
■ 動画作成の詳細
「生命の起源」の研究 本研究グループは、2014 年度から始まった、文部科学省科学研究費補助金・新学術領域研究「冥王代生命学 の創成」(研究課題番号 2605)において、これまで未解明の問題であった「生命の起源」の研究に取り組んできました。 丸山 特任教授らは、本研究によっていくつもの新たな仮説を提案してきました。
代表的な仮説は以下の通りです。
(1)地球は大気・海洋のない裸の惑星として生まれたあと、二次的な隕石爆撃によって大気・海洋をもつに至ったと する、地球誕生の新たなシナリオである ABEL モデル
(2)前駆的化学進化を促進するための理想的な場として新たに提案された生命誕生場のモデル、自然原子炉間 欠泉モデル
(3)最初の生命が誕生するまでの環境進化とそれに伴う生命進化を具体的に提案した三段階進化モデル、3ステ ップモデル
■ 動画作成の経緯
「生命がいつ、どこで、どのように誕生したのか」を解明するための研究は、生命科学からのアプローチだけでは前進さ せることはできません。たとえば、生命が誕生し進化する場としての地球のような惑星を生むためには、太陽系においてど のような条件が必要なのか?地球はどのように形成されて、大気・海洋を持つ惑星になったのか?地球誕生後の表層 環境はどのようなものだったのか?生命誕生の場に必須な条件はなにか?など様々な問いが生まれます。つまり、生命 の起源の研究は、天文学、物理学、生物学、地質学、地球化学など、独立した様々な研究領域を総合化した超学 際的研究なのです。こうした研究は、多岐にわたる専門分野の研究グループが参加する超学際領域であるため、専門 外の方々が理解することはたやすいことではありません。また、専門的な科学雑誌に論文として発表したとしても、専門 外の研究者および一般の方々がこれらの研究成果に触れる機会はあまりありません。そこで、私たちは、これらの研究 成果をより理解しやすい形で発表するために、これらの動画を制作してきました。
生命の誕生は、40 億年以上過去に遡る冥王代(46-40 億年前の時代)であると考えられていますが、冥王代地 球の痕跡は現在の地球上にはほとんど残されていません。そのために、冥王代の地球環境や生命誕生の場は具体的 に映像化されてきませんでしたが、本研究グループは、これまでの最新の研究成果に基づき、冥王代の地球表層環境 を復元し、生命誕生の場とそこで起きる生命誕生までのプロセス、生命と地球の共進化をよりわかりやすく映像で表現 することを目指し、CG 映像「全地球史アトラス」を完成させました。
■ 動画の公開
「全地球史アトラス」の制作は 2015 年に始まり、すでに第1章(地球誕生)から第9章(古生代)が YouTube 上で 公開されています。
その続編であり、また「全地球史アトラス」の最終シリーズである、第 10 章「中生代から人類の誕生まで」、第 11 章 「人類代〜人類誕生と文明の構築」、第 12 章「地球の未来」が新たに公開されます。
■ これから
新学術領域研究「冥王代生命学の創成」は、平成30年度をもって5年間の研究期間を完了しました。5年間の 研究期間中、これまでの常識を覆す新たな仮説の提案、それらの仮説の実証など、多数の成果を挙げてきました。中でも、生命誕生場に必須の「9つの条件」を提案するとともに、磁気回転不安定による惑星形成、世界最古のジルコン の発見、マントル下部に存在する冥王代大陸の発見、自然原子炉間欠泉モデルから予言される化学進化の実証、 原始的生命体の代謝、冥王代類似環境微生物の代謝、などは、今後の本研究領域における基盤となるべき重要な 研究成果となっています。
「全地球史アトラス」映像は、今回を最終章として完結しますが、研究の発展にともなって映像のアップデートを続け、 本研究領域の最新の成果を全世界の方々にお届けする予定にしています。
全地球史アトラス
第1章:地球誕生
第2章:プレートテクトニクス
第3章:原始生命誕生
第4章:生命進化の第1ステージ
第5章:生命進化の第2ステージ
第6章:生命進化の第3ステージ
第7章:生命大進化の夜明け前
第8章:カンブリア紀の生命大進化
第9章:古生代
第10章:中生代から人類の誕生まで
第11章:人類代〜人類誕生と文明の構築
第12章:地球の未来
■ 作成体制と支援
「全地球史アトラス」は、研究領域代表である黒川教授の指揮のもと、丸山特任教授を中心として動画を作成され ました。
動画作成にあたり、有限会社ライブの上坂浩光氏の協力を仰ぎました。上坂氏は、2011 年に開催された第 52 回 科学技術映像祭において、映像作品「HAYABUSA BACK TO THE EARTH 帰還バージョン」で文部科学大臣賞を 受賞するなど、多数の受賞歴を持つCGクリエーターで、小惑星探査機はやぶさ、ならびに、はやぶさ2(宇宙航空研究 開発機構)に関わる映像作品も制作しており、自然科学に非常に造詣が深く、また、生命の誕生や進化の謎に人一 倍興味を持つ人物の一人です。
また、本作品は、文部科学省科学研究費補助金・新学術領域研究「冥王代生命学の創成」(課題番号 2605) の支援の下におこなった研究の成果を映像にしたものです。
■ 問い合わせ先
<研究に関すること>
東京工業大学 地球生命研究所主任研究者・理学院特任教授
丸山茂徳 (まるやま しげのり)
情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所 ゲノム進化研究室
教授 黒川 顕 (くろかわ けん)
<報道担当>
情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所 リサーチ・アドミニストレーター室広報チーム