世界最速の逆項間交差を示す有機EL発光材料の設計・開発に成功

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2020-08-04 京都大学

 梶弘典 化学研究所教授、和田啓幹 同博士課程学生、中川博道 同特任研究員、脇坂安晃 同修士課程学生、松本壮馬 同学部生の研究グループは、有機分子において、極めて速い逆項間交差(reverse intersystem crossing, RISC)を実現できる分子設計指針の構築に成功しました。また、この新たな設計指針に基づき、TpAT-tFFOと名付けた、優れた新規分子を開発することにも成功しました。

 従来、軽い原子のみを用いた有機分子においては重原子効果が期待できないため、RISCは起こらないか、起こったとしてもその速度は他の競合する過程と比べて遅いものでした。しかし、TpAT-tFFOは軽原子のみから構成されるにもかかわらず、107 s−1(1秒間に1000万回)を超える極めて速いRISCを達成しました。このRISCは、水素、炭素、窒素のみからなる有機分子において、現在、世界最速です。

 本研究は、近年実用化が活発になっている有機ELデバイスなどの高特性化に有用な指針を与えるとともに、生体応用や酸素センサーなどへの応用も期待されます。

 本研究成果は、2020年8月4日に、国際学術雑誌「Nature Photonics」のオンライン版に掲載されました。

図:TpAT-tFFOの構造。ドナーとアクセプターはFace-to-Faceの配置から10°傾いている。

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1038/s41566-020-0667-0

Yoshimasa Wada, Hiromichi Nakagawa, Soma Matsumoto, Yasuaki Wakisaka & Hironori Kaji (2020). Organic light emitters exhibiting very fast reverse intersystem crossing. Nature Photonics.

日刊工業新聞(8月4日 26面)に掲載されました。

詳しい研究内容≫

有機化学・薬学
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