認知行動療法アプリに関する京都大学、田辺三菱製薬株式会社とのライセンス契約締結のお知らせ

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うつ病治療のための新たなソリューションを開発

2020-09-01 国立精神・神経医療研究センター

国立精神・神経医療研究センター(NCNP)は、京都大学と開発したうつ病の治療をめざしたスマートフォン用アプリケーション「こころアプリ(以下、「本アプリ」)」について、田辺三菱製薬株式会社(本社:大阪市、代表取締役社長:上野 裕明)、京都大学およびNCNPの三者で、本アプリの医療機器製造販売承認取得をめざした臨床開発および販売に関するライセンス契約(以下、「本契約」)を締結しましたので、お知らせします。

NCNP認知行動療法センターの堀越勝センター長と京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻健康増進・行動学分野の古川壽亮教授が開発した本アプリは、精神療法の一つである認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy 、以下「CBT」)1)を再現した治療用アプリです。これまでにうつ病患者さんを対象とした医師主導臨床研究(FLATT試験, Mantani et al., 2017)で、抗うつ薬との併用により、薬剤単独群と比較して、うつ病の症状を改善することが確認されています。娯楽性や視覚的な工夫をこらした本アプリを、薬物療法と併用して使用することで、抗うつ効果をさらに高めることが期待されており、うつ病の治療用アプリとして、日本で初めての医療機器製造販売承認の取得をめざします。

研究の背景・内容

単極性うつ病は、死亡を含めないQOL損失の非常に大きな原因であり(日本で4番目、世界で2番目)、さらに今後20年間その損失は増加すると予測されています。2008年には、日本でのうつ病による経済的損失は1年間で約2兆円と推計されました。
うつ病治療の臨床現場での第一選択肢は抗うつ剤による薬物療法ですが、薬物療法のみではうつ病の治療は不完全で、2~4か月の急性期治療で寛解に達する者は50%未満です。一方、うつ病に対して有効性を証明されたもう一つの治療法として、認知行動療法があり、単独で薬物療法とほぼ同等の効果を有するとともに、併用により各単独治療よりも有効性が増強することも示されています

研究の意義・今後の展望

認知行動療法の施行には標準で1セッション1時間×16回の対面治療が必要となり、技能を持った人材と時間とを要する治療であるために、十分普及しているとは到底言えない状況です。一方、近年コンピュータやスマートフォンを用いた認知行動療法がオーストラリア、イギリス、オランダ、スウェーデンなどで行われています。スマートフォンを用いた認知行動療法も開発されつつあり、通常治療に劣らない効果があるとするもの、あるはコンピュータ(インターネット)版と同等の効果があるとする研究があります。莫大な患者数の割に少ない精神科医を考えると、新しい情報通信技術、中でも携帯性のあるスマートフォンを使用した認知行動療法を開発することが今後のうつ病治療には助けになると考えられます。

NCNP認知行動療法センターとは

認知行動療法センターは2010年に、NCNP内に、我が国初の「認知行動療法」に特化した研究と実践のために創設された施設。疾患特異型のCBTについての介入研究や新しいタイプのCBTの開発と効果研究、CBT均てん化のための研修、国内外の専門機関との連携などを行っている。CBTを含め精神療法に関する実証的な研究では我が国でもトップレベルであると同時に、CBTの臨床実践にも力を注いでおり、NCNP病院におけるCBT臨床にも携わっている。
周産期メンタルヘルスから、児童青年における予防・早期介入・治療、成人のうつ病・不安症・心的外傷後ストレス障害・不眠障害・強迫症・慢性痛、認知症の方々やその介護者へのケア、複雑性悲嘆など、さまざまな問題に対するCBTの研究や研修、社会普及に取り組んでいる。近年は、スマートフォンアプリなどデジタル機器を用いた査定法や介入法の開発、脳画像やセンシング機器を用いての精神療法の効果要因の究明、遠隔医療の拡大、人工知能技術を応用したセラピスト訓練の開発にも取り組んでいる。

用語解説

1)認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy 、「CBT」)について
認知療法・認知行動療法とは、人間の気分や行動が認知のあり方(ものの考え方や受け取り方)の影響を受けることから認知の偏りを修正し、問題解決を手助けすることによって精神疾患を治療することを目的とした構造化された精神療法です。近年発達してきた情報処理モデルないしは認知モデルを基盤にした治療法で、行動的技法や認知的技法などを用いて治療されます。
出典:「うつ病の認知療法・認知行動療法 治療者用マニュアル」(厚生労働省)

関連論文情報

論文名:Smartphone Cognitive Behavioral Therapy as an Adjunct to Pharmacotherapy for Refractory Depression: Randomized Controlled Trial.

著者名:Mantani A et al.

掲載誌: Journal of Medical Internet Research

DOI :10.2196/jmir.8602

URL :https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29101095/

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