富士通とペプチドリーム、高速かつ高精度に中分子医薬品候補化合物の探索を実現

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「デジタルアニーラ」の活用で創薬プロセスの大幅な短縮を目指す

2020-10-13 富士通株式会社,ペプチドリーム株式会社

富士通株式会社(注1)(以下、富士通)とペプチドリーム株式会社(注2)(以下、ペプチドリーム)は、このたび、環状ペプチド(注3)による中分子創薬において、組合せ最適化問題を高速に解く新アーキテクチャー「デジタルアニーラ」とHPC(ハイパフォーマンス・コンピューティング)を活用することで、創薬の候補化合物となる環状ペプチドの安定構造(注4)探索を12時間以内に高精度で実施することに成功しました。

これにより、創薬プロセスにおいて、候補化合物の探索に必要となるウェット実験(注5)の工程を最小化し、結果として候補化合物の探索期間を短縮することにつながります。

ペプチドリームは、本成果によって得られた技術と「デジタルアニーラ」を創薬プロセスに実適用していく予定で、医薬品候補化合物の探索期間を短縮し、新薬開発の可能性をさらに高めることが期待できます。また、現在開発を進めている新型コロナウイルス感染症の治療薬開発にも適用していくことで、開発スピードの加速を図ります。

富士通は、本技術を含む「デジタルアニーラ」を創薬開発に広く活用してもらうことで、医療分野における社会問題の解決に貢献していきます。

中分子医薬品は、その分子量が低分子医薬品と抗体医薬品(高分子医薬品)の中間に位置し、コストを比較的抑制した上で、かつ副作用が出にくいという両者の長所を併せ持つことから注目を集めており、ペプチドリームでは、中分子医薬品の候補化合物の開発を数多く進めています。一方、数兆種類の化合物ライブラリーから候補化合物を絞り込む過程において、中分子の候補化合物は従来のコンピュータでは安定構造を探索することが難しく、ウェット実験を繰り返し行う必要があることから、一般的に数か月から年の単位で時間を要するのが課題でした。

富士通の「デジタルアニーラ」は、組合せ最適化問題に特化した技術で、計算量が膨大で従来のコンピュータでは解くことができなかった問題において最適解を見つけ出すことができます。

2019年9月から、富士通とペプチドリームは共同研究を開始し、このたび、「デジタルアニーラ」とHPCを活用することで、創薬の候補化合物となる中分子サイズの環状ペプチドの安定構造探索を高速かつ高精度化する新たな基盤技術の開発に成功しました。

共同研究の成果

今回、環状ペプチドの安定構造探索を「デジタルアニーラ」が得意とする組合せ最適化問題として解く新技術を株式会社富士通研究所(注6)が開発し、さらにHPCでの分子構造探索技術と組み合わせることで、中分子サイズの環状ペプチドの安定構造探索を12時間以内に高精度で実施することに成功しました。

開発した技術を活用して「デジタルアニーラ」およびHPCで計算した構造と、ペプチドリームが実際の実験で導いた構造を比較すると、主鎖のずれが0.73Å(オングストローム)(注7)の精度となり、実際の実験とほぼ同等の候補化合物を高精度に探索できたことになります。これにより、候補化合物の探索に必要な実験工程を最小化できる可能性が高まります。

実験構造と計算構造の比較(主鎖部分のみ表示、灰色が実験で求めた構造、緑色が計算で求めた構造)
実験構造と計算構造の比較(主鎖部分のみ表示、灰色が実験で求めた構造、緑色が計算で求めた構造)

開発した技術

  1. 粗視化モデル(注8)による中分子の安定構造の探索技術

    複雑な分子構造を「デジタルアニーラ」で高速かつ効率的に計算するために、分子を粗く捉えた(粗視化)構造を用いて中分子の安定構造を探索する技術を開発しました。この技術により、従来のコンピュータを使った計算で求めることが難しいとされる中分子サイズの環状ペプチドの安定構造の高速な探索ができ、候補化合物を絞り込むことができます。

  2. 「デジタルアニーラ」とHPCとの連携技術

    「デジタルアニーラ」で求めた候補化合物の粗視化モデルを、HPCで構造探索できる全原子モデルに自動変換する技術を開発しました。HPCでは、全原子を使ったシミュレーションが可能なため、「デジタルアニーラ」で絞り込んだ候補から、さらにその構造の全ての原子の位置を決めることで、より精細な探索が可能になります。「デジタルアニーラ」とHPCを組み合わせて計算することで、高速かつ高精度な構造探索を実現しました。

開発した中分子サイズの環状ペプチド安定構造探索の流れ
開発した中分子サイズの環状ペプチド安定構造探索の流れ
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今後

ペプチドリームは、中分子創薬における環状ペプチドの探索に本技術と「デジタルアニーラ」を実適用していく予定です。これにより、中分子医薬品候補化合物の探索を飛躍的に効率化し、新たな治療薬の開発に必要な期間の短縮を図ります。

富士通は、本技術を含む「デジタルアニーラ」を創薬開発に広く活用してもらうことで、医療分野における社会問題の解決に貢献していきます。

富士通株式会社 執行役員常務 長堀泉のコメント

富士通は、組合せ最適化問題を高速に解く「デジタルアニーラ」を実社会の具体的な課題に適用することで、そのブレイクスルーに取り組んでいます。今回、「デジタルアニーラ」とHPCを活用した富士通独自のコンピューティング技術により、中分子創薬の分野における課題であった医薬品候補化合物の高精度な構造探索を実現しました。今後は、中分子創薬の分野で世界をリードするペプチドリームの創薬探索の現場に適用することで、探索時間の効率化はもちろんのこと、新薬創出プロセスそのものの革新に貢献していきたいと考えています。

ペプチドリーム株式会社 取締役副社長 舛屋圭一のコメント

環状ペプチド探索行程をさらに効率化するために2019年9月から始めた共同研究において、初期のマイルストーンである「デジタルアニーラ」による高精度な構造探索に、約一年で成功したことを大変喜ばしく思っています。今後は、この高精度を維持し探索時間の短縮化に挑戦しながら、実際の創薬探索の現場で活用していくことを想定しています。活性の向上だけにとどまらず、物性予測や動態予測につながる検討を両社で行っていけることを楽しみにしています。それにより、革新的な新薬創出がこれまで以上に加速していくものと考えています。

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

関連資料

以上

注釈

注1 富士通株式会社:
本社 東京都港区、代表取締役社長 時田 隆仁。
注2 ペプチドリーム株式会社:
本社 神奈川県川崎市、代表取締役社長 リード・パトリック。
注3 環状ペプチド:
2個以上のアミノ酸分子が化学結合によってつながった化合物をペプチドといい、環状ペプチドはペプチドが環状につながった化合物。中分子はアミノ酸が2~50個程度つながったものであり、中分子でないペプチドもある。
注4 安定構造:
自然な状態における分子の立体構造。構造は周りの環境などにより変化するが、その中で安定な構造の状態が医薬品の候補となり得る。
注5 ウェット実験:
実験室で行う実験。計算機による実験と対をなす。
注6 株式会社富士通研究所:
本社 神奈川県川崎市、代表取締役社長 原 裕貴。
注7 Å(オングストローム):
長さの単位。1Åは10-10m(0.1ナノメートル)。
注8 粗視化モデル:
複数の原子を1つの粒子でまとめて表現する分子モデル。
本件に関するお問い合わせ

富士通コンタクトライン(総合窓口)
ペプチドリーム株式会社(IR広報部)

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