2021-03-26 東京大学
東京大学大学院総合文化研究科教授の酒井 邦嘉(酒井研究室に所属する3人の大学院生を著者に含む)は、海外留学、語学教育、学習研究、文化交流、教育旅行事業を展開する私立教育機関イー・エフ・エデュケーション・ファースト(本社:スイス、以下 EF)との共同研究において、短期間の語学留学中に脳機能の顕著な変化が生じることを初めて明らかにしました。本研究グループは、東京都渋谷区にあるEF東京校で新たに日本語の習得を始めた外国人留学生を対象にして、約2ヵ月の間隔を空けてリーディングとリスニングのテストを2回行いました。MRI装置(注1)を用いて脳活動を計測した結果、脳の言語野に加えて視覚野において活動が減少しましたが、聴覚野では逆に活動が増加しました。この結果は、言語習得で単に脳が活性化するのではなく、脳機能に変化が生じていることを示すものです。コロナ禍で海外渡航が規制されて留学の計画変更を余儀なくされる学生がいる中、たとえ短期間であっても現地の豊富な言語環境で学ぶことの重要性が明らかとなりました。
(注1)MRI装置
MRI(磁気共鳴映像法)は、脳の組織構造を、水素原子の局所磁場に対する応答性から測定し画像化する手法で、全く傷をつけずに外部から脳組織を観察する方法として広く使用されています。そのために使用する医療機器が、超伝導磁石によって高磁場(3テスラ程度)を発生させるMRI装置です。注2で述べる「fMRI」でも、このMRI装置を使用します。
論文情報
Kuniyoshi L. Sakai*, Tatsuro Kuwamoto, Satoma Yagi, and Kyohei Matsuya, “Modality-dependent brain activation changes induced by acquiring a second language abroad,” Frontiers in Behavioral Neuroscience: 2021年3月26日, doi: 10.3389/fnbeh.2021.631957.
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