産学連携プロジェクトの成果として開発~特殊な微細構造を有する脊椎固定用デバイスが保険収載~

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2021-06-01 帝人ナカシマメディカル株式会社,東京医科歯科大学,日本医療研究開発機構

帝人ナカシマメディカル株式会社(岡山県岡山市)は、2012年より日本医療研究開発機構(以下「AMED」)の「医療分野研究成果展開事業・戦略的イノベーション創出推進プログラム(S‐イノベ)」において、東京医科歯科大学(東京都文京区)を代表機関とするプロジェクトに参画し、脊椎疾患の治療に用いる新たな脊椎固定用デバイスの開発に取り組んできました。

そして、9年間にわたる産学連携による本プロジェクトの成果として、独自の金属加工技術を用いた特殊な微細構造を有する脊椎固定用デバイス「UNIOS(ユニオス)PLスペーサー」を開発し、本年4月の医療機器としての製造販売承認取得を経て、本日、保険収載されました。


「UNIOS PLスペーサー」


「UNIOS PLスペーサー」設置イメージ

開発の経緯
  1. 本デバイスは、椎間板ヘルニアや脊椎すべり症などの脊椎疾患の治療に用いる脊椎ケージです。カゴのような形状をしており、手術によって除去された椎間板の代替として椎体間の高さを保持するとともに、椎体骨と癒合して固定されることで、背骨の矯正や修復を行います。
  2. 一般的な脊椎ケージは十分な骨癒合を得るために、自家骨(患者さん自身の骨)を製品の空洞部分に充填する必要があることから、自家骨の採取による患者さんの痛みや医師の負担の軽減に向けて、自家骨の充填なく、十分な骨癒合が得られる製品の開発が望まれていました。
  3. こうした中で、臨床上の課題を解決する革新的な脊椎デバイスを創製するため、AMEDの「S‐イノベ」による支援のもと、東京医科歯科大学生体材料工学研究所の塙隆夫教授がプロジェクトマネージャーとなり、2012年より大阪大学、東北大学、北海道大学、北海道医療センターおよび帝人ナカシマメディカルが、産学連携で新合金の開発、機能表面の創成、新たな製造プロセスの確立など、素材の開発からデバイス製造に至るまでの一貫した研究開発に取り組んできました。
  4. その結果、産学連携による共同研究とAMEDの支援による成果として本デバイスが開発され、有効性と安全性の評価を経て、2020年に薬事申請、2021年4月9日に製造販売承認を取得しました。
開発した脊椎固定用デバイスについて
  1. 本デバイスは、椎体骨とのより良い癒合と早期の固定を得るため、椎体骨との接触面に3Dプリンタによる金属加工技術(三次元金属積層造形法)を用いた特殊な微細構造をデザインしているのが特徴です。これにより、デバイスの表面および内部での骨形成と同時に骨配向化が誘導(*1)されるため、自家骨を粉砕してケージ内に充填するなどの処置を行わずに優れた骨癒合を得ることが期待できます。
  2. 最大の特徴である微細構造は、大阪大学大学院工学研究科の中野貴由教授が提唱する「骨組織の配向性に着目した骨質評価指標(骨健全性指標)」(*2)に基づき、骨配向化の誘導を実現する三次元構造として設計されました。また、北海道医療センターの統括診療部長である伊東学先生による臨床学的知見に基づくアドバイスのもと、動物実験を含む非臨床試験による有効性評価データの蓄積やデザインの改良を積み重ね、「UNIOS PLスペーサー」の製品化に至りました。

(*1)健常な骨組織を構成するコラーゲンおよびハイドロキシアパタイトは、荷重などに対して力学的機能を最大限に発揮できるよう特定の方向に配列されている(骨組織の配向性)。この構造を誘導することで健常な骨の構造を再現し、力学的な機能を高めることが期待できる。
(*2)骨組織の配向性を評価することで骨組織の健全性の指標とする考え方。大阪大学の中野教授らが、骨密度評価と並ぶ骨質の評価手法の一つとして提唱している。

今後の展開

本デバイスは、本年7月以降の発売を予定しており、帝人ナカシマメディカルが製品の製造および販売を行います。今後はこのたび確立した技術について、AMEDおよび本プロジェクトに参画した各機関の協力のもと、他の脊椎デバイスへの水平展開や人工関節製品への応用を積極的に検討していきます。

お問い合わせ先

メディア関係のお問合せ先
帝人株式会社 コーポレートコミュニケーション部

その他のお問合せ先
帝人ナカシマメディカル株式会社 管理部経営企画課

東京医科歯科大学のお問合せ先
国立大学法人東京医科歯科大学 総務部総務秘書課広報係

AMED事業に関するお問合せ先
国立研究開発法人日本医療研究開発機構実用化推進部 研究成果展開推進課

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