近年のオリンピック開催国では、開催前後で国民のスポーツ実践率に変化はなかった

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行動につなげる戦略的な取組みが必要

2021-07-22 東京大学

1.発表者:
鎌田真光(東京大学大学院医学系研究科 公共健康医学専攻 健康教育・社会学分野 講師)

2.発表のポイント:
◆ オリンピックの開催・招致にあたっては、様々なレガシー(注1)の実現が期待されている。過去約 30 年分・15 大会のオリンピック開催地立候補ファイルや公式文書を調べた結果、2012 年ロンドン大会以降に、国民や開催都市住民のスポーツ実践や身体活動(注2)の促進が、期待されるレガシーとして明言されるようになったことが示された。
◆ しかし、開催都市・国における全国(都市)調査データを2次利用して分析した結果、ほとんどの国もしくは都市において、オリンピックの開催前後で国民・住民のスポーツ実践率や身体活動量に変化が確認されなかった。
◆ 2012 年ロンドン大会を対象として、人々のインターネット検索の傾向を分析したところ、運動(exercise)に関する検索が大会後にイギリス国内で増えており、国民の運動に対する「関心」については高まった可能性が示された。
◆ 意識だけでなく、国民のスポーツ実践や身体活動の普及といった「行動」の変容につながるレガシーを実現するためには、大会組織委員会、国際オリンピック委員会(IOC)、開催国のオリンピック委員会(JOC 等)、国・地域の行政機関、そしてスポンサー企業などが一体となって戦略的に取り組む必要があると考えられる。

3.発表概要:
オリンピックの開催・招致にあたっては、国民全体の身体活動とスポーツを促進し、健康増進に寄与するとともに、スポーツ、教育、都市、環境面等でのレガシー実現が期待されています。レガシーとは遺産とも訳される英語の「legacy」のことであり、オリンピックにおいては、その開催を契機に社会に生み出される持続的な影響のことを意味します。スポーツ、社会、環境、都市、経済など、様々な分野が含まれます。
東京大学大学院医学系研究科の鎌田真光講師は、シドニー大学のエイドリアン・ボウマン教授を中心とする国際共同研究グループの一員として、過去のオリンピックが開催国における国民のスポーツ実践や身体活動に与えた影響を検証しました。その結果、近年の大会では、国民や開催都市住民のスポーツ実践や身体活動の促進が、期待されるレガシーとして公式文書等で明言されるようになったものの、ほとんどの国もしくは都市において、オリンピックの開催前後で国民・住民のスポーツ実践率や身体活動量に変化がなかったことが明らかとなりました。人々のインターネット検索の傾向からは、国民の運動に対する「関心」については高まった可能性が示されており、今後は、意識だけでなく、国民のスポーツ実践や身体活動の普及といった「行動」の変容につなげるためのより戦略的な取り組みが必要と考えられます。
この研究成果は、英国の医学誌である The Lancet 誌が、2012 年ロンドン・オリンピックを契機にオリンピック開催年に発刊している身体活動特集号(Physical Activity Series)の掲載論文として発表されました。今回は The Lancet 誌で 3 回目の特集号発刊であり、オリンピックと直接関連する内容を扱う論文が特集号に掲載されるのは初めてとなります。

詳しい資料は≫

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