2022-05-17 東芝エネルギーシステムズ株式会社
当社が国立大学法人山形大学(以下、山形大学)に納入した重粒子線治療注1装置による回転ガントリー注2式照射室で複数の角度から照射が必要な頭頸部腫瘍に対する治療が、本日開始されました。
当社が納入した装置は、回転ガントリー式照射室1室と水平方向固定照射式照射室1室の計2治療室で構成される重粒子線治療装置で、昨年2月に水平方向固定照射式照射室での治療が開始され、今年3月に回転ガントリー式照射室での前立腺がん治療が開始、今夏には回転する角度が拡大し骨盤部がんの治療が、秋には呼吸に合わせて照射することも可能になり、肺がんなどへの治療が開始される予定です。
本装置は、省エネルギー、省スペース・小型化、イージーオペレーション(運転・管理の容易化)、廃棄物低減注3等の山形大学の多様なニーズを満たしています。当社の最新技術を駆使することで、高速スキャニング照射や呼吸同期照射も実現しております。2018年から据付を開始し、調整作業を経て、治療開始を迎えました。
今後も重粒子線治療装置の普及を目指して、国内外で積極的な受注活動を展開し、質の高いがん治療の実現に貢献してまいります。
注1:炭素イオンを光の速さの約70%まで加速して炭素イオン線(=重粒子線)とし、がん腫瘍に対して体の外から照射する外部放射線治療の一種。重粒子線は体内で広がりにくく、がん腫瘍にピンポイントで集中させることができるため、周囲の正常な細胞を傷つけにくい。加えて他の放射線に比べて「がん細胞の遺伝子」を破壊する能力が高いという特長がある。患者の身体的負担が少なく早期の社会復帰を可能とする治療方法と言われている。
注2:照射角度を360度自由に設定できるため、患者は楽な姿勢のままで最適な角度から”がん腫瘍”を狙える。また、重粒子線の低散乱特性とスキャニング照射技術を組み合わせることにより中枢神経や保護臓器を避けて、がん腫瘍への線量集中性をさらに高めることが可能。
注3:従来方式で必要とされていた補償フィルターや患者コリメータを必要としないため、治療期間の短縮と放射化廃棄物の低減を両立できる。