医療分野に適用可能な画像認識AIの新アルゴリズムを開発 ~AIをてんかんの脳波判読へ応用、診断の省力化に向けた研究開発を加速~

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2022-10-20 株式会社リコー

株式会社リコー(社長執行役員:山下 良則)は、国立大学法人大阪大学(以下、大阪大学)との共同研究で、深層学習を用いた画像認識AI(人工知能)の新しいアルゴリズムを開発しました。

脳磁計で計測した脳波の分析に本研究で開発したアルゴリズムを応用することで、てんかんに特徴的な波形(てんかん波形)を見分けることが可能であることが、研究結果から示されました。本技術をてんかんの手術前に行う脳磁図検査※1に適用することで、診断の大幅な省力化が期待されるほか、将来的に完全自動化できる可能性が開かれました。

※1
脳活動によって生じる磁場を、超電導素子を用いた高感度のセンサー約200個で計測することにより、脳のどこが活動しているかを精度よく、無侵襲で調べることができる検査。

背景

てんかんの脳磁図検査は、脳磁計を用いて無侵襲かつ高い精度でてんかん波形をとらえ、てんかんの場所を特定することをサポートする手法で、病巣を切除する手術を行う際の術前検査として、大きな役割を果たします。しかし、波形を正確に判読するには熟練した専門医が何時間もかけて解析する必要があり、大きな負担になっていました。

リコーは30年以上前から画像認識技術の研究を行ってきており、近年ではAIの研究も進めています。こうした経験を活かし、今回、脳磁図検査で得られる磁場の波形データを画像に見立て、画像認識AIてんかん波形の判読を試みました。

共同研究の概要

リコーは大阪大学と共同で、画像を対象とした深層学習に独自の改良を加えたアルゴリズムを開発しました。このアルゴリズムは、てんかん波を検出するだけでなく、その発生時刻と広がりも判読して、脳内のどこでてんかん活動が生じているかを、人間の操作なしに自動解析できるものとなっています。2種類の深層学習を組み合わせ、専門医が過去に解析した400以上の検査結果を学習させることによって実現したことが特徴です。

大阪大学がこのアルゴリズムを実験的に用いて波形データを分析した結果、熟練の医師と同等の解析性能が得られることを確認できました。

この結果により、手間のかかっていた波形判読を大幅に省力化し、将来的に完全自動化できる可能性が開かれました。そのため、てんかん専門医の負担の大幅軽減、検査結果の均質化が期待されます。また、てんかん医療技術の向上にもつながるため、患者のQOL向上も期待されます。

本研究成果は、米国科学誌「IEEE Transactions on Medical Imaging」の10月号に、10月1日に掲載されました。

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

てんかん脳磁図検査の普及、ひいては精度の高い無侵襲のてんかん診断の普及が見込まれます。この手法は脳磁図からのてんかん波形の判別にとどまらず、広く脳波判読の自動化への応用が期待されます。さらに近年、高齢者で認知症が疑われる方の中には、認知症だけでなく、てんかん発作が一定の割合で含まれていることもわかってきており※2、認知機能低下者のてんかんのスクリーニング等への応用も期待されます。

※2
国立長寿医療研究センター,「それって認知症?『てんかん』かも!?」(2022年8月20日取得)
論文

“Fully-Automated Spike Detection and Dipole Analysis of Epileptic MEG Using Deep Learning”

著者名
1,2 平野諒司、1,3 江村拓人、2 中田乙一、2 中嶋俊治、2 朝井都、4 下野九理子、3 貴島晴彦、*1,3 平田雅之(*責任著者)
所属
  1. 大阪大学 大学院医学系研究科 脳機能診断再建学共同研究講座
  2. 株式会社リコー
  3. 大阪大学 大学院医学系研究科 脳神経外科学
  4. 大阪大学 大学院連合小児発達学研究科
DOI
https://doi.org/10.1109/TMI.2022.3173743

本研究は、大阪大学大学院医学系研究科脳機能診断再建学共同研究講座の研究の一環で、リコーとの共同研究として行われました。

補足

本発表は株主・投資家の皆さま向けに当社活動の情報提供を目的とした研究成果に関わるものです。
一般の方への情報提供を目的とした製品広告ではありません。
また、本技術は研究段階にあり、医療機器・医療機器プログラムではありません。

お問い合わせ先
株式会社リコー 広報室

 

医療・健康
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