2023-01-25 医薬基盤・健康・栄養研究所
【概要】
国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所(大阪府茨木市、理事長・中村祐輔)(以下「NIBIOHN」という。)と京都大学大学院薬学研究科の連携講座・実践創薬研究プロジェクトに所属する足立 淳連携教授らの研究グループ、金尾 英佑助教,石濱 泰教授,同大学大学院工学研究科の久保 拓也准教授,大塚 浩二教授,和田 俊太郎 (研究当時:修士課程学生) らの研究グループ,秋吉 一成教授らの研究グループは,エクソソームの表面に結合している糖鎖を認識してエクソソームを分類することができるスポンジ状高分子分離媒体を開発し,同じ細胞に由来するエクソソームでもその表面糖鎖によって働きが異なることを明らかにしました。従来のエクソソーム研究においては,エクソソームをその特性や機能で分類することが困難であり,本発明はこのボトルネックを解消する普遍的な手法になることが期待されます。
本研究成果は,2022年12月13日に米国の国際学術誌「Analytical Chemistry」にオンライン掲載され,カバーピクチャー(学術誌の表紙絵)に採択されました(下図)。
【今回の研究の意義】
本手法は糖鎖以外にもあらゆる表面分子に適用可能であり,エクソソーム研究のボトルネックとなる不均一性の解消と,真の生物学的意義の解明を果たす上で重要な意義を持ちます。また,特異的な機能を持つエクソソームを選択的に濃縮するデバイスとしても期待できるため,エクソソームをバイオマーカーに利用した診断の精度・感度向上にも繋がります。また、今回のスポンジ状高分子分離媒体は、原理としては皆様が判子を押す際に使用する下敷きで用いているスポンジと同様の素材を用いており、安価に大量に生産できることも画期的な点として挙げられます。
【研究者のコメント】
本研究は,薬学研究科・工学研究科・医薬健栄研の学際的な連携があってようやく達成できた成果です。今後は,本技術を基軸にエクソソームの真の機能解明に迫るとともに,エクソソームを利用した病態診断,治療,薬物送達など様々な技術へと展開して行く予定です。(金尾)