2023-08-07 京都大学
森林は伐採後、長い時間をかけて変化するので、そこにすむ生き物にどんな変化が起きるのかを解明するには、息の長い調査が必要です。半谷吾郎 生態学研究センター准教授(旧:霊長類研究所准教授)らのグループは、全国から大学生主体のボランティアの調査員を募って「ヤクザル調査隊」を結成し、毎年夏に屋久島でニホンザルの個体数調査を継続しています。20年間にわたる調査の初期にサルが多く、食物も豊富だった伐採地では、2010年代以降、サルが食べないスギが多く生えることになったことにより、ニホンザルにとっての生息環境が悪化していきました。しかし、伐採地でのサルの減少は、2000年代前半には起こっており、多数のサルがたまたま同時に死亡したという偶然による変化が、生息環境の悪化によって強化されたことが分かりました。本研究は、野生動物の個体数変動は、偶然による変動と、環境の変化による決定論的なプロセスの両方が関与することを示しています。
本研究成果は、2023年8月3日に、国際学術誌「Forest Ecology and Management」にオンライン掲載されました。
934人のマンパワーで20年間のサルの数と森林の変動を解明!
研究者のコメント
「本研究に用いた20回の調査に参加した人はのべ934人、1989年の第1回の調査以来の参加者は、1600⼈を超えます。『ヤクザル調査隊』は、野生動物の長期にわたる個体数変動についての貴重な資料を蓄積するとともに、多くの若い⼈たちの学びの場でもあるという、稀有な存在です。わたし自身も、多くの仲間たちとともにこの調査を運営することで、研究者として育ててもらいました。ともに屋久島の⼭の中で苦楽を共にし、今はそれぞれの人生を生きている、年齢も住む場所も職業もばらばらな調査隊OBOGのみなさんとともに、成果を世に出せたことを喜びたいと思います。論文は出ましたが、『ヤクザル調査隊』は終わりません。これからも調査を続ける決意を込めて、論文のタイトルに、『中間報告』とつけました。」
詳しい研究内容について
20年間の森林とニホンザルの個体数の変動―934人の「ヤクザル調査隊」による成果―
研究者情報
研究者名:半谷 吾郎