哺乳動物ゲノムのどこにDNA複製開始領域が存在するのか?(総説論文)

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2024-07-03 国立遺伝学研究所

ゲノムDNAがどのように複製されるかという問いは、分子生物学における重要テーマの一つであり、DNA複製異常はゲノム不安定性、遺伝疾患、細胞死、発癌に関係する。そのため、DNA複製は大腸菌や出芽酵母を材料として、これまで長年研究されてきた。これらの単細胞モデル生物では、DNA複製開始領域はDNA配列で規定されており、特定のコンセンサス配列を持つゲノム領域からDNA複製が開始する。一方で、ヒトを含む哺乳類動物細胞では、複製開始領域にコンセンサス配列は存在せず、ゲノム上のどこから開始するのかいまだに理解が進んでいない。そこで、本総説論文では、これまで報告されている大規模シーケンシングに基づく複製開始領域の探索成果を取りまとめて比較議論した。さらに、出芽酵母と哺乳動物細胞のDNA複製機構の共通性と違いに注目し、哺乳動物細胞において複製開始領域がどのように決定されるのか、その仮説メカニズムを提示し、将来のDNA複製研究の方向性と課題を議論した。

筆頭著者の朱孝軒博士(Zhu, Xiaoxuan)は遺伝研博士研究員として支援を受けました。

図:出芽酵母と哺乳動物細胞における複製開始領域選択メカニズムの違い。酵母においてはARS(autonomously replicating sequence)というコンセンサス配列を持つ部位にライセンシング複製因子が集積しDNA複製が開始する。一方、哺乳動物細胞ではライセンシング因子はゲノム上に広く分布しており、その後に集積する発火因子が制御を受けて特定の場所に集積することが、複製開始領域を作るのに重要ではないかと考えられる。


Replication initiation sites and zones in the mammalian genome: Where are they located and how are they defined?

Xiaoxuan Zhu, Masato T. Kanemaki*
*責任著者

DNA Repiar (2024) 141, 103713 DOI:10.1016/j.dnarep.2024.103713

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