自己免疫性の神経疾患から体を守るTh1-Treg ~免疫制御因子インターフェロンγが鍵を握る抑制機構~

ad

2024-11-19 大阪大学,科学技術振興機構

自己免疫性の神経疾患から体を守るTh1-Treg ~免疫制御因子インターフェロンγが鍵を握る抑制機構~

ポイント
  • 多発性硬化症の動物モデルであるEAE(実験的自己免疫性脳脊髄炎)発症マウス脳内において、インターフェロンガンマ(IFN-γ)の刺激が制御性T細胞(Treg)の分化を制御していることを明らかに。
  • IFN-γ刺激によりTregがTh1型Treg(Th1-Treg)へ分化し、このTh1-Tregが病変部に集積することで病気の悪化を抑えていることを発見。
  • 病気の悪化を抑えるTh1-Tregの機能亢進による新規治療法の開発が期待される。

大阪大学 微生物病研究所 岡本 将明 特任研究員(研究当時)、山本 雅裕 教授(免疫学フロンティア研究センター、感染症総合教育研究拠点 兼任)らの研究グループは、多発性硬化症の動物モデルであるEAE発症マウスにおいて、IFN-γの刺激によってTregからTh1-Tregへの分化が誘導され、このTh1-Tregが病変部に集積することで病気の悪化を抑えていることを明らかにしました。

多発性硬化症は、本来なら私たちの身体に侵入した病原体を退治してくれるはずの免疫系が暴走して自身の神経組織を傷つけてしまう自己免疫疾患の一種です。発病原因ははっきりと分かっていませんが、30歳前後での発病率が高く、そのうち約7割が女性です。日本では指定難病として認定されており、患者数は約17,000人と推定されています。症状の再発、悪化を抑えるために、免疫抑制剤などを投薬する対症療法が取られますが、根本治療法は確立されていません。

多発性硬化症やEAEで、T細胞の一種であるTregは病態進行を抑制するとされていましたが、その詳細な機能、特にTh1-Tregなどの各亜集団(サブセット)の役割については未解明でした。本研究ではTh1-Tregのみを除去したマウスにより解析を実施し、シングルセルRNA-seq解析を駆使した結果、EAE脳内において、主にT細胞から分泌されるIFN-γがTregのTh1-Tregへの分化を誘導すること、さらにTh1-Tregが炎症を抑制し、EAEの増悪化を防いでいることを見いだしました。本研究成果により、Th1-Tregを標的とした新規免疫療法や病態検査法の開発が期待されます。

本研究成果は、日本時間2024年11月19日(火)に、米国科学誌「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America(米国科学アカデミー紀要)」(オンライン)で公開されます。

本研究は、科学技術振興機構(JST) 創発的研究支援事業(FOREST)「次世代型免疫細胞サブセット解析手法の開発とその実装」(グラント番号:JPMJFR206D)の一環として行われました。

<プレスリリース資料>
<論文タイトル>
“IFN-γ-induced Th1-Treg polarization in inflamed brains limits exacerbation of experimental autoimmune encephalomyelitis”
<お問い合わせ先>

<研究に関すること>
山本 雅裕(ヤマモト マサヒロ)
大阪大学 微生物病研究所 教授

<JST事業に関すること>
加藤 豪(カトウ ゴウ)
科学技術振興機構 創発的研究推進部

<報道担当>
大阪大学 微生物病研究所 企画広報推進室
科学技術振興機構 広報課

医療・健康
ad
ad
Follow
ad
タイトルとURLをコピーしました