理化学研究所

細菌一つを見分ける細菌叢計測法の開発~木(個々の細菌)と森(細菌叢)を同時に見る革新的手法~ 医療・健康

細菌一つを見分ける細菌叢計測法の開発~木(個々の細菌)と森(細菌叢)を同時に見る革新的手法~

多種・多数の細菌で構成される細菌叢中の個々の細菌を一つ一つ区別して極めて正確に細菌の種類と数を計測する手法を開発し、ビタミンA欠乏によるマウス腸内細菌叢の微少な変化を捉えることに成功しました。腸内細菌に関連する病態の理解や診断に貢献するとともに、皮膚、口腔、植物、土壌、海洋、大気などのさまざまな器官や環境に存在する細菌叢の高精度計測へ発展させることで、幅広い科学分野への応用が期待できます。
皮膚表面で産生されるペプチドのはたらきを発見~アトピー性皮膚炎、乾癬でも~ 医療・健康

皮膚表面で産生されるペプチドのはたらきを発見~アトピー性皮膚炎、乾癬でも~

アトピー性皮膚炎や乾癬などの慢性の皮膚炎では、皮膚表面の「表皮」と、皮膚の免疫細胞との間に悪循環がおこって、炎症が慢性化していると考えられています。研究グループは、C10orf99というペプチドが、これらの皮膚炎で共通して、表皮の体表近くで大量に産生されることを見つけました。さらに、C10orf99ペプチドは皮膚のバリア成分の産生をへらすこと、また、C10orf99ペプチド自体が炎症をおこす作用をもつことを発見しました。
シグナル伝達の「偏り」を生み出すリン酸化機構の解明~副作用を切り分けたGPCR作動薬の開発に貢献~ 有機化学・薬学

シグナル伝達の「偏り」を生み出すリン酸化機構の解明~副作用を切り分けたGPCR作動薬の開発に貢献~

薬剤の主要な作用標的であるGタンパク質共役型受容体(GPCR)の機能を調節する因子のGPCRキナーゼ(GRK)について、その活性制御機構を明らかにしました。降圧薬の標的として知られる1型アンジオテンシンII受容体(AT1受容体)に関して、薬理作用の異なる作動薬が、別々のGRK選択性とβアレスチン機能を誘導することを見出しました。
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アミロイドの脱凝集メカニズムを解明~アミロイド構造に依存した脱凝集機構が明らかに~ 有機化学・薬学

アミロイドの脱凝集メカニズムを解明~アミロイド構造に依存した脱凝集機構が明らかに~

全反射照明蛍光顕微鏡を用いて、酵母のSup35プリオンタンパク質のアミロイド(Sc4アミロイド)に蛍光ラベルしたシャペロンタンパク質を加え、Sc4アミロイドが脱凝集する過程を調べました。脱凝集にはHsp104、Ssa1、Sis1の三つのシャペロンタンパク質が必要であることが分かりました。アミロイドにはSsa1とSis1が先に結合し、そこにHsp104が結合・解離を繰り返すことで、アミロイドが分断されることが分かりました。別の構造を持つSup35のSc37アミロイドでは、アミロイドが一様に脱凝集(溶解)されたため、脱凝集の様式が分断とは異なることも明らかになりました。
制御性T細胞の新しいマーカーを発見~T細胞受容体の配列パターンがT細胞の運命に影響する~ 細胞遺伝子工学

制御性T細胞の新しいマーカーを発見~T細胞受容体の配列パターンがT細胞の運命に影響する~

ヒトのヘルパーT細胞のT細胞受容体配列のビックデータを解析し、制御性T細胞のT細胞受容体の配列を詳しく調べました。独自の解析アルゴリズムを考案し、制御性T細胞を特徴付けるT細胞受容体の配列パターンを発見しました。さらに、その配列パターンを基にした「TiRPスコア」を作成し、T細胞受容体の配列情報だけを用いて制御性T細胞に分化する確率を推定することに成功しました。
昆虫ホルモンの生合成を撹乱する蚊の発育阻害剤の発見~環境に優しい農薬の開発に向けて~ 生物化学工学

昆虫ホルモンの生合成を撹乱する蚊の発育阻害剤の発見~環境に優しい農薬の開発に向けて~

既存の殺蚊剤に対して抵抗性を示す蚊の出現が確認されています。そのため、単一の薬剤に過剰に頼るのではなく、作用機序の異なる複数の薬剤をローテーションして使用することで、薬剤抵抗性の出現を回避する戦略が不可欠です。デング熱、黄熱、ジカウイルス感染症を媒介するネッタイシマカ由来のNoppera-boの活性を阻害する薬剤を探索しました。その結果、植物の二次代謝物としてよく知られるフラボノイド化合物であるデスメチルグリシテインが極めて有効であることを発見し、さらにX線結晶構造解析注2)によって分子レベルでの作用機序の解明に成功しました。
新たなイントラクライン機構を用いた加齢性眼疾患治療へ~眼局所のホルモンの加齢変化とサーカディアンリズムが鍵~ 医療・健康

新たなイントラクライン機構を用いた加齢性眼疾患治療へ~眼局所のホルモンの加齢変化とサーカディアンリズムが鍵~

加齢によって生じるドライアイの原因疾患に対し、眼局所のホルモンを制御するイントラクライン機構の発見という独自の新所見に基づいた、新たな作用機序の治療アプローチを見出すことに成功しました。このイントラクライン機構を眼のまぶたのマイボーム腺に見つけ、そのホルモン合成酵素の解明に基づいた補酵素点眼療法により、高齢者のドライアイの主原因となる同腺機能不全を改善できることを明らかにしました。マイボーム腺の機能には顕著な日周リズム(サーカディアンリズム)があり、酵素の活性ピーク時刻を狙った投薬が最も有効であることも明らかにしました。
孤独を感じ仲間を求める脳内回路~親和的社会性に重要な分子と神経回路の発見~ 生物化学工学

孤独を感じ仲間を求める脳内回路~親和的社会性に重要な分子と神経回路の発見~

雌マウスが孤独を感じ仲間を求める行動に重要な分子神経機構を発見しました。孤立状態を感知し、仲間と一緒にいようとする雌マウスの親和的社会行動は、cMPOAのアミリンとCalcrとの結合によって制御されていることが分かりました。
最適な根の長さとは~植物が環境に応じて根の長さを決める仕組み~ 生物化学工学

最適な根の長さとは~植物が環境に応じて根の長さを決める仕組み~

「小胞体ストレス応答(UPR)」と呼ばれる細胞内恒常性の維持機構が欠損したシロイヌナズナの変異株(bz1728)が示す、著しい根の伸長阻害を回復した突然変異体nobiro6株の分子遺伝学的解析を行いました。伸長回復は基本転写因子複合体の構成因子「TAF12b」の機能欠損によることが明らかになりました。
がん細胞のフェロトーシスを増強する化合物を発見~フェロトーシス抑制タンパク質FSP1に対する新しい阻害剤~ 有機化学・薬学

がん細胞のフェロトーシスを増強する化合物を発見~フェロトーシス抑制タンパク質FSP1に対する新しい阻害剤~

「フェロトーシス」と呼ばれる制御された細胞死を増強する新しい化合物を発見しました。フェロトーシスの分子メカニズムの解明や、薬剤耐性がんなどの疾患の治療法の開発に貢献すると期待できます。フェロトーシスは、がんをはじめとするさまざまな疾患と関連があります。特に、既存の抗がん剤に耐性を持つがんはフェロトーシスに対して感受性が高いことから、フェロトーシスの誘導が新たながん治療戦略として期待されています。
植物の地下での情報のやりとりを発見~地下茎で繋がった植物株間でのコミュニケーション~ 生物化学工学

植物の地下での情報のやりとりを発見~地下茎で繋がった植物株間でのコミュニケーション~

地下茎で繁殖するイネ科植物が、地下茎を介した情報のやりとりにより、不均一な窒素栄養環境に巧みに応答して成長する仕組みを新たに発見しました。栄養繁殖をする野生イネ(オリザ・ロンギスタミナータ)のラメットが、不均一な窒素栄養条件に晒された場合、窒素欠乏側のラメットからの情報を受けて、窒素十分側のラメットで相補的に多くの窒素を吸収・同化し、窒素十分側のラメットの成長を優先させることで、群落として巧みに応答する仕組みを明らかにしました。
卵巣がんの新しい治療標的を同定~がん研究に医療ビッグデータとコンピュータ科学を活用~ 医療・健康

卵巣がんの新しい治療標的を同定~がん研究に医療ビッグデータとコンピュータ科学を活用~

医療ビッグデータとコンピュータ科学を活用し、卵巣がんの新しい治療標的として、「LKB1-MARK3経路」を同定しました。卵巣がんのうち最も死亡者数の多い「高異型度漿液性卵巣がん」の新しい治療法の開発につながると期待できます。
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