パーキンソン病の認知機能障害は鼻からはじまる?~レヴィ小体病における嗅覚系伝播経路の解明~

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2022-08-23 京都大学

澤村正典 医学部附属病院特定病院助教、尾上浩隆 同特定教授、山門穂高 医学研究科特定准教授、上村紀仁 同特定助教、伊佐正 同教授、高橋良輔 同教授らの研究グループは、αシヌクレインの凝集体(フィブリル)を霊長類の一種であるマーモセットの嗅球へ投与した実験により、パーキンソン病などを含むレヴィ小体病における嗅覚系伝播経路と認知機能障害の関連性について明らかにしました。

パーキンソン病はドパミン神経が進行性の変性を起こす難病で、進行期になると多くの患者さんで認知症を合併します。パーキンソン病の類縁疾患としてレヴィ小体型認知症という認知症も知られており、これらはまとめてレヴィ小体病と呼ばれます。認知症の患者さんは急速に増加しており、介護者の負担に加え、社会的・経済的にも大きな問題となっています。最近、レヴィ小体病の病態として、αシヌクレインという蛋白質が脳内に異常に凝集し、神経細胞同士の間を伝播することで、脳に広く病変を形成し、病状を進行させるという仮説が注目されています。私たちはマーモセットを用いたレヴィ小体病モデルの作製に成功し、嗅球からの伝播が認知機能障害と関連している可能性を示しました。レヴィ小体病の霊長類モデルはパーキンソン病やレヴィ小体型認知症の病態解明や治療薬の開発に有用であると考えられます。

本研究成果は、2022年8月22日に、国際学術誌「Movement Disorders」のオンライン版に掲載されました。

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霊長類の一種であるマーモセットの嗅球へαシヌクレインの凝集体を投与すると、脳内へと伝播しました。さらに投与側の脳では広範囲な脳機能低下を認めました。

研究者のコメント

「私は脳神経内科医師として多くのパーキンソン病の患者さんを診察してきました。パーキンソン病の進行期では、認知機能障害が治療の妨げになることが多く、非常に大きな問題だといつも感じております。私たちの作製したモデル動物を用いた研究により、一人でも多くの患者さんやご家族の苦しみを取れればと望んでいます。また、これまでマーモセットを用いた研究は行ったことがなく色々と苦労もありましたが、多くの方に支えていただき最終的に新しいモデル動物を作製することができたことに感謝いたします。」(澤村正典)

詳しい研究内容≫

研究者情報
研究者名:澤村 正典
研究者名:山門 穂高
研究者名:伊佐 正
研究者名:髙橋 良輔

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