2022-09-21 京都大学
橋口隆生 医生物学研究所教授、鈴木干城 同助教、佐藤佳 東京大学教授らの研究コンソーシアム「The Genotype to Phenotype Japan (G2P-Japan)」は、新型コロナウイルスの「懸念される変異株(VOC:variant of concern)」のひとつである「オミクロンBA.5株」のウイルス学的特徴を、流行動態、免疫抵抗性、および実験動物への病原性等の観点から明らかにしました。
まず、統計モデリング解析により、オミクロンBA.5株の実効再生産数は、オミクロンBA.2株に比べて1.4倍高いことを見出しました。また、オミクロンBA.5株の抗原性が、オミクロンBA.2株とは異なることを明らかにしました。さらに、オミクロンBA.5株のスパイクタンパク質の合胞体形成活性は、オミクロンBA.2株に比べて有意に高いことを明らかにしました。そして、オミクロンBA.5株のスパイクタンパク質を持つウイルスは、オミクロンBA.2株に比べてハムスターにおける病原性が高いことを突き止めました。
本研究成果は、2022年9月13日に、科学雑誌「Cell」オンライン版で公開されました。
図:オミクロンBA.5株のスパイクタンパク質を持つウイルスの病原性
それぞれオミクロンBA.2株(rBA.2、緑)、オミクロンBA.2.12.1株のスパイクタンパク質を持つウイルス(rBA.2.12.1、紫)、BA.5株のスパイクタンパク質を持つウイルス(rBA.5、赤)をハムスターに経鼻接種し、体重(左)、および、呼吸機能(Penh, Rpef, 皮下血中酸素濃度 [SpO2])を経時的に測定した。その結果、オミクロンBA.5株のスパイクタンパク質を持つウイルスは、オミクロンBA.2株およびBA.2.12.1株のスパイクタンパク質を持つウイルスに比べ、病原性が高い(体重減少が大きく、呼吸機能の異常の程度も高い)ことが明らかとなった。各図左下の数字は、重回帰検定による調整済P値を示す。d.p.i., days postinfection(感染後日数)。
研究者情報
研究者名:橋口 隆生
研究者名:鈴木 干城