プロドラッグ型クルクミン注射製剤の抗腫瘍効果及び治療標的の包括的な解析~安全性の高い抗がん薬としての開発に期待~

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2022-10-21 京都大学

金井雅史 医学研究科准教授、白川康太郎 同助教、掛谷秀昭 薬学研究科教授、株式会社セラバイオファーマらの共同研究グループは、経口投与では吸収されにくいというクルクミン原末の問題点を克服した安全性の高い水溶性プロドラッグ型クルクミン(TBP1901)が、既存の抗がん薬に抵抗性を示す多発性骨髄腫を移植したマウスモデルにおいて、安全性に優れ顕著な抗腫瘍効果を示すことを明らかにしました。

ショウガ科のウコンに含まれるポリフェノール化合物であるクルクミンは、古くより香辛料や着色料として広く用いられてきました。クルクミンは基礎研究で様々ながん種に対し抗腫瘍効果を発揮することが証明されており、抗がん薬としての開発が期待されてきました。しかし、クルクミン原末をそのまま経口摂取しても多くは腸管で吸収されないために、その抗がん作用を引き出すのに十分な血中濃度を得ることはできませんでした。そこで研究グループは、クルクミンの生物学的利用能(バイオアベイラビリティー)の向上のために精力的な研究を行った結果、生体内において、クルクミンモノグルクロニド(CMG)がクルクミンのプロドラッグとして利用でき、既存の抗がん薬(オキサリプラチン)に抵抗性を示す大腸癌モデルに対し優れた抗腫瘍効果を発揮することを報告しています。さらにクルクミンモノグルクロニド・ナトリウム塩とすることで、化合物として安定性の高い水溶性プロドラッグ型クルクミン(TBP1901)の製造方法を確立させました。

今回標準治療薬(ボルテゾミブ)に抵抗性を示す多発性骨髄腫マウスモデルを用いて、TBP1901が体重減少等の副作用を伴うことなく、顕著な抗腫瘍効果を発揮することを明らかにしました。さらに生体内におけるTBP1901からクルクミンへの活性化にはβ-グルクロニダーゼ(GUSB)と呼ばれる酵素が関与すること、またCRISPR-Cas9スクリーニングという手法をもちいて活性本体であるクルクミンの標的について包括的な解析を行いました。TBP1901の活性本体であるクルクミンは香辛料としても広く用いられている化合物であることから、安全性の高い抗がん薬としての開発が期待されます。

本研究成果は、2022年10月11日に、「European Journal of Pharmacology」のオンライン版に掲載されました。

プロドラッグ型クルクミン注射製剤の抗腫瘍効果及び治療標的の包括的な解析~安全性の高い抗がん薬としての開発に期待~
図 標準治療薬であるボルテゾミブ抵抗性の多発性骨髄腫細胞株を用いたマウスモデル。TBP1901投与群では腫瘍は著明に縮小。

研究者のコメント

「クルクミンは香辛料としても使われている天然化合物です。クルクミンが抗がん作用を有することは多くの基礎研究で証明されていますが、経口投与では抗がん作用を発揮するのに十分な血中濃度が得られませんでした。TBP1901は体内でクルクミンに変換されるプロドラッグ型の注射製剤であり、安全性の高い新しい抗がん薬としての開発が期待できると考えています。」(金井雅史、掛谷秀昭)

詳しい研究内容≫

研究者情報
研究者名:金井 雅史
研究者名:白川 康太郎
研究者名:掛谷 秀昭

有機化学・薬学
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