カニにおける愛と死の狭間での立ち回り

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2022-12-05 基礎生物学研究所

北九州市立自然史・歴史博物館自然史課学芸員の竹下文雄博士と、基礎生物学研究所学振特別研究員の西海望博士は、カニにおけるメス獲得と捕食リスクの狭間での立ち回りについての発見をしました。
カニの一種であるハクセンシオマネキのオスは、干潟に巣穴を作り、そこにメスを呼び込み交配します。オスがメスを獲得するには、求愛ディスプレイを行い、また他のオスと闘って巣穴やなわばりを維持することが必要です。そのためオスは巣穴の外で活動しなくてはなりません。しかし、野外観察の結果、巣穴の外には捕食者であるヒメアシハラガニが徘徊しており、巣穴から進出しすぎると、捕食者に狙われた際に巣穴に逃げこむ前に追いつかれてしまうことが確認されました。
そのため、盗塁を狙う野球選手がどこまでリードするかを見極めなくてはならないように、シオマネキのオスも巣穴からどこまで進出するか見極める必要があると考えられます。分析の結果、シオマネキのオスは、捕食者との距離に応じて巣穴からの進出距離をうまく調整していることが判明しました。また一方で求愛やなわばり防衛を行う個体ほど、捕食者に襲われやすいことが分かりました。このことから、シオマネキのオスは、メスの獲得と捕食されるリスクのジレンマの中でうまくバランスをとって立ち回っていることが示唆されました。
本成果は、国際科学雑誌「Behavioral Ecology and Sociobiology」に掲載されました。

fig1.jpg
fig2.jpg図:ハクセンシオマネキが巣穴に逃げ込む様子。
間一髪、アシハラガニに追いつかれる前に巣穴に到達していることから、シオマネキは逃げ込めるギリギリのところまで巣穴から進出していたことがわかる。


雑誌名 Behavioral Ecology and Sociobiology
掲載日 2022年11月22日
論文タイトル:Social behaviors elevate predation risk in fiddler crabs: quantitative evidence from field observations
著者:Fumio Takeshita, Nozomi Nishiumi
DOI: 10.1007/s00265-022-03268-5

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