ボルネオ島から半地中性トカゲの新種を発見~熱帯雨林の林床の小型爬虫類の多様性と保護の必要性~

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2019-09-18 京都大学

福山伊吹 人間・環境学研究科修士課程学生、疋田努 名誉教授、西川完途 地球環境学堂准教授(兼・人間・環境学研究科准教授)らの研究グループは、マレーシアのボルネオ島から同島から2個体目の記録となるラルティアトカゲ属(Larutia)の一種を採集し、その個体の形態的、遺伝的な特徴を調査した結果、これまで知られている同属の全ての種と異なる特徴を持つ未記載種であることを明らかにしました。この種は他の種と比べて体が小さいことから、コガタラルティアトカゲ(Larutia kecil)として新種記載(命名)しました。
ボルネオ島から2種目のラルティアトカゲ属となる本種の発見は、熱帯雨林の林床に生息する小型爬虫類の多様性がこれまで過小評価されてきたことを示しています。これらの小型爬虫類は、哺乳類や鳥類などと比べると野生動物保護などで見過ごされがちですが、近年の東南アジア地域における熱帯雨林破壊の影響を大きく受けていることが想定されます。
今回、本種が見つかったペンリッセン山は保護区ではありませんが、この地域でしか見つかっていない爬虫両生類も多く、この地域固有の多くの生物の保全を進めていくためにも当地の保護が必要であると考えられます。
本研究成果は、2019年8月29日に、国際学術誌「Zootaxa」のオンライン版に掲載されました。

図:ボルネオ島から見つかった新種コガタラルティアトカゲ

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.11646/zootaxa.4661.3.6

IBUKI FUKUYAMA, TSUTOMU HIKIDA, MOHAMAD YAZID HOSSMAN, KANTO NISHIKAWA (2019). A new species of the genus Larutia (Squamata: Scincidae) from Gunung Penrissen, Sarawak, Borneo. Zootaxa, 4661(3), 522-532.

詳しい研究内容について

ボルネオ島から半地中性トカゲの新種を発見
―熱帯雨林の林床の小型爬虫類の多様性と保護の必要性―

概要
京都大学大学院人間・ 環境学研究科 福山伊吹 修士課程学生、理学研究科 疋田努 名誉教授、地球環境学堂 西川完途 准教授(兼:人間 環境学研究科准教授)らの研究グループは、マレーシアのボルネオ島から同島 から 2 個体目の記録となるラルティアトカゲ属・(Larutia)の一種を採集し、その個体の形態的、遺伝的な特徴 を調査しました。その結果、これまで知られている同属の全ての種と異なる特徴を持つ未記載種であることを 明らかにしました。この種は他の種と比べて体が小さいことから、コガタラルティアトカゲ(Larutia・kecil) として新種記載(命名)しました。
ボルネオ島から 2 種目のラルティアトカゲ属となる本種の発見は、熱帯雨林の林床に生息する小型爬虫類の 多様性がこれまで過小評価されてきたことを示しています。これらの小型爬虫類は、哺乳類や鳥類などと比べ ると野生動物保護などで見過ごされがちですが、近年の東南アジア地域における熱帯雨林破壊の影響を大きく 受けていることが想定されます。今回、本種が見つかったペンリッセン山は保護区ではありませんが、この地 域でしか見つかっていない爬虫両生類も多く、この地域固有の多くの生物の保全を進めていくためにも当地の 保護が必要であると考えられます。
本研究成果は、2019 年 8 月 29 日に国際学術誌「Zootaxa」にオンライン掲載されました。

図:ボルネオ島から見つかった新種コガタラルティアトカゲ

1.背景
ラルティアトカゲ属(Larutia)は東南アジアに分布するト カゲで、地中生活に適応して小さく退化した四肢が特徴です。 半地中性であることから発見が難しく、これまで 8 種が知ら れていますが、そのうちのいくつかの種は、記載後に追加の標 本が得られておらず、属レベルで大変珍しいトカゲであると 言えます。ボルネオ島においては、プエラルティアトカゲ・(L.・ puehensis)1 種のみが知られており、この種はこれまで記載 に使われた標本 1 個体しか知られていませんでした。

2. 新種発見の経緯
京都大学の福山伊吹修士課程学生と西川完途准教授は、 2018 年 3 月にマレーシアのサラワク州ペンリッセン山で行っ た爬虫両生類相調査中に、ラルティアトカゲ属の 1・ 種を採集 しました。この個体はボルネオ島から採集された 2 個体目の ラルティアトカゲとなります。この個体を形態学的手法、遺伝 学的手法により、過去に記載されている種と比較した結果、形 態的、系統的に明らかに他の種と異なることがわかり、未記載 種であることが明らかになりました。(図 1)

3. 他の種との違い
今回得られた個体は成体であったにも関わらず、他のほと んどの近縁種と比べて明らかに小型であったことから、コガ タラルティアトカゲ・(Larutia・kecil)として新種記載しました (kecil はマレー語で・「小さい」という意味)。体の大きさ以外 にも、後肢の第 2 趾の裏の鱗の数が 2 枚であることや胴体を 一周する鱗の数が 22・ 枚であること、体に斑点や帯状の模様が ないことなども他の種と異なります。(図 1)

4. 新種発見の重要性
ボルネオ島から 2 種目のラルティアトカゲ属となる本種の 発見は、このグループのトカゲのさらなる新種が他地域から 発見される可能性を示唆しています。(図 2)今回の発見から 分かるように、熱帯雨林の林床には、調査の進んでいる陸上脊 椎動物でもまだ多くの新種発見の可能性があります。また、哺 乳類や鳥類などと比べると野生動物保護で見過ごされがちな 小型爬虫類も、近年の東南アジア地域における熱帯雨林破壊 の影響を人知れず大きく受けていることが想像されます。今 回、本種が見つかったペンリッセン山は保護区ではありませんが、この地域でしか見つかっていない爬虫両生類も多く、近年も複数の種がこの山から新種として記載され ています。この地域固有の多くの生物の保全を進めていくためにも、当地の環境の保護・ 保全が必要であると 考えられます。


図 1.(上)ボルネオ島から見つかった新種コガタラルテ ィアトカゲ
(中)腹面
(下)A: 鼻先の不透明な鱗 B: 右後肢の裏面


図 2. ボルネオ島のラルティアトカゲ 2 種の分布

<論文情報>
タイトル:A new species of the genus Larutia (Squamata: Scincidae)  from Gunung Penrissen, Sarawak,  Borneo(ボルネオ島サラワク州ペンリッセン山からラルティアトカゲ属(有隣目,トカゲ科)の 1 新種)
著 者:Ibuki Fukuyama*, Tsutomu Hikida, Mohamad Yazid Hossman & Kanto Nishikawa 福山伊吹(京都大学 大学院人間・環境学研究科 修士課程学生)・疋田努(京都大学 理学研究科 名 誉教授) モハマッドヤジッドホスマン(サラワク森林局・ 西川完途(京都大学大学院 地球環境学 堂(併任:人間 環境 学研究科)・ 准教授)
掲載誌:Zootaxa  DOI:https://doi.org/10.11646/zootaxa.4661.3.6
アブストラクト URL:https://www.biotaxa.org/Zootaxa/article/view/zootaxa.4661.3.6

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