細胞が作り出すモザイクパターンのパズル~その仕組みを生物学と数学の連携で読み解く~

ad

2022-03-28 京都大学

カレル・シュワドレンカ 理学研究科准教授、ルダイナ・モハマド 同研究員(現・フィリピン大学助教)、村川秀樹 龍谷大学准教授の研究グループと富樫英 神戸大学助教の研究グループは共同で、細胞が作り出すモザイクパターンの仕組みを生物学と数学の連携で読み解くことに成功しました。

耳や鼻といった動物の感覚器官を顕微鏡で覗くと、数種類の細胞が作る規則正しい幾何学的な模様が現れます。この規則的な細胞パターンが、外界からの刺激を感知する上で重要な役割を果たしていると考えられています。しかし、細胞がどのように安定的にパターンを作り出すことができるのか、その仕組みについてまだ謎が多く残されています。

この謎に対し、富樫助教の研究グループはこれまでに行った実験から、細胞タイプによって細胞間に働く接着力の違いが生じ、この接着力の違いによりパターンが作られるのではないか、という仮説を立てました。そこで、シュワドレンカ准教授、モハマド同研究員、村川准教授の数学研究グループは、この仮説を数理的に検証することを試みました。細胞パターン形成の過程を記述する新しい数理モデルを創出し、計算機上でシミュレーションをするための数値計算手法を開発しました。実際の測定値に基づいた数値シミュレーションの結果、感覚器で見られる細胞パターンを再現することに成功しました。感覚細胞のパターン形成メカニズムが解明され、感覚障害等の疾病の治療にも役立つ可能性が示唆されます。

本研究成果は、2022年3月18日に、国際学術誌「Communications Biology」にオンライン掲載されました。

(上段)マウスの嗅上皮の胎生14日目から生後1日目にかけての細胞パターンの変化。小さな細胞は嗅細胞、大きい細胞は支持細胞(撮影:神戸大学 富樫英) (下段)接着力を示す実験測定値を一部用いて行われた数値シミュレーションの結果。
図:(上段)マウスの嗅上皮の胎生14日目から生後1日目にかけての細胞パターンの変化。小さな細胞は嗅細胞、大きい細胞は支持細胞(撮影:神戸大学 富樫英)
(下段)接着力を示す実験測定値を一部用いて行われた数値シミュレーションの結果。


嗅上皮でみられる細胞パターン形成の数値シミュレーション。左側は野生型マウスの接着分子の濃度測定値を用いた計算、右側はαN-カテニンという接着分子を阻害して、細胞間の接着力を変化させたときのシミュレーションで、いずれも実際に観察される細胞パターンを再現することが出来ています。

詳しい研究内容≫

研究者情報
研究者名:カレル・シュワドレンカ
研究者名:ルダイナ・モハマド

ad

生物工学一般
ad
ad
Follow
ad
タイトルとURLをコピーしました