2023-03-30 京都大学
井上浩輔 医学研究科助教と津川友介 カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)准教授らの研究グループは、米国の国民健康栄養調査データを用いて、週に1日または2日だけでも1日あたり8,000歩の歩数を達成することで健康に良い影響が得られることを明らかにしました。
今までの研究により、平均的に8,000歩/日以上歩く人は死亡率が低くなることがわかっていましたが、週に数日だけ歩く場合の健康への影響については分かっていませんでした。本研究では、加速度計で測定された歩数の情報を用いて、1日に8,000歩以上歩いた日数が0日、1~2日、3~7日であった場合の死亡リスクをそれぞれ検討しました。その結果、1週間に8,000歩以上歩く日数が多い人ほど、全死亡と心血管疾患の死亡リスクが低いことが示されました。興味深いことに、その死亡リスク低下率は初めの数日で大きく、週に1日または2日でも8,000歩以上歩いている人は、週に3日以上定期的に歩行している人とほぼ同等の死亡リスク減少を認めました。
本研究結果は、週に1~2日程度でも目標歩数を達成することが健康に十分良い影響をもたらす可能性を示唆します。運動の時間を確保できない人や、仕事の都合上定期的な運動が難しい人でも、週に数日間だけ歩く習慣を取り入れることで健康リスクを低減できる可能性があり、現代社会の働く世代や高齢者にとって重要なエビデンスとなることが期待されます。
本研究成果は、2023年3月29日に、国際学術誌「JAMA Network Open」に、オンライン掲載されました。
週に一度も8,000歩/日以上歩いていない人に比べて、1~2日歩いている人は14.9%、3日以上ある人いる人は全死亡率が16.5%低かった。同様に心血管死亡率についても、週に一度も8,000歩/日以上歩いていない人に比べて、1~2日歩いている人は8.0%、3日以上ある人いる人は8.4%低かった。
研究者のコメント
「本研究は井上(筆頭著者)が内科外来で患者さんから聞かれた次の質問から始まりました。『先生、たくさん歩く必要があることはわかりました。でも忙しくて平日はそんなに歩くことができません。週末にためて歩いても問題ないでしょうか?』この問いに答えるべく文献検索をしたところ、身体活動量については週2回だけ運動しても十分に健康のベネフィットが得られるという先行研究を見つけたものの(これを“Weekend warrior”と呼びます)、歩数についてはエビデンスがないことに気づき、本研究を遂行するに至りました。本結果が外来で質問された患者さんをはじめ多くの人々にとって役立つ歩行指針として世の中に貢献できますと臨床研究者として嬉しく思います。」(井上浩輔)
研究者情報
研究者名:井上 浩輔