ソルガムにおける乾汁性決定遺伝子の発見~糖やエタノールの生産性向上に関わる100年来の謎を解明~

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2018/08/28  国立遺伝学研究所

Transcriptional switch for programmed cell death in pith parenchyma of sorghum stems

Masaru Fujimoto, Takashi Sazuka, Yoshihisa Oda, Hiroyuki Kawahigashi, Jianzhong Wu, Hideki Takanashi, Takayuki Ohnishi, Jun-ichi Yoneda, Motoyuki Ishimori, Hiromi Kajiya-Kanegae, Ken-ichiro Hibara, Fumiko Ishizuna, Kazuo Ebine, Takashi Ueda, Tsuyoshi Tokunaga, Hiroyoshi Iwata, Takashi Matsumoto, Shigemitsu Kasuga, Jun-ichi Yonemaru, Nobuhiro Tsutsumi

PNAS August 27, 2018. 201807501; published ahead of print August 27, 2018. DOI:10.1073/pnas.1807501115

 

五大穀物の一つであるソルガムは、製糖・エネルギー作物としても、高い潜在能力を有しています。その茎搾汁液からの糖やエタノールの生産効率を左右する形質の一つに、茎の水分含量によって規定される乾汁性が知られています。乾汁性は、単一遺伝子によって支配される形質であることが、100年ほど前から予想されていましたが、その実体は不明でした。

東京大学と農業・食品産業技術総合研究機構、名古屋大学、国立遺伝学研究所、基礎生物学研究所、株式会社アースノート、信州大学の研究グループは、ソルガムの乾汁性決定遺伝子を世界に先駆けて単離することに成功しました。さらに、その働きにより、茎柔組織の大規模なプログラム細胞死が誘導され、茎水分含量の低下が起こることを明らかにしました。製糖・エネルギー作物における茎水分含量の増大は、糖やエタノール生産の原料に用いる茎搾汁液の生産量や生産効率の向上につながります。今回の研究成果は、乾汁性決定遺伝子機能の調節を標的とした、糖やエタノール生産用作物の効率的な品種改良や、新たな資源作物開発への道を拓くものとして期待されます。

本研究成果は、米国科学誌「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」に平成30年8月27日(アメリカ合衆国・東部時間)に掲載されました。

本研究は、農林水産省委託プロジェクト「新農業展開ゲノムプロジェクト」、国立研究開発法人 科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業「二酸化炭素資源化を目指した植物の物質生産力強化と生産物活用のための基盤技術の創出」CREST・さきがけ、文部科学省および独立行政法人 日本学術振興会 科学研究費助成事業の支援を受けて行われました。

遺伝研の貢献
独自の細胞培養技術により乾汁性決定遺伝子を高発現する培養細胞株を作出し、乾汁性決定遺伝子が細胞構造に及ぼす影響を解析しました。

Figure1

図:
ソルガムにおける乾性品種と汁性品種の茎の違い
(上段) 搾汁の様子。汁性品種の茎には、多量の水分が含まれる。
(中段) 茎の断面図。乾性品種の茎では、含水率の低いスポンジ状の柔組織が発達する。
(下段) 茎断面の拡大図。乾性品種のスポンジ状の柔組織は、気体(矢尻)を内包した死細胞から構成される。
スケールバーは、5 mm (中段)と100 μm (下段)。

細胞遺伝子工学
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