2024-01-05 京都大学
本研究イメージ図: HHとLLの経路を選ぶゲームをするサル。(実際の研究では目線で色を選ぶ二者択一課題)
本研究では、光遺伝学的操作によってライトを当てる部位(6VVまたは6VD)を調整することによって、この様な状況下のサルの選択を調整し、さらに脳の活動からサルの選択を解読することに成功した。HH: ハイリスク・ハイリターン、LL: ローリスク・ローリターン、VTA: 腹側被蓋野、6VV: 腹外側6野下端の腹側、 6VD: 腹外側6野下端の背側
Credits: Trais
テレビゲームでは、何らかの危険が増えるものの、その分利益も大きくなるような仕掛けが取り入れられていることが多くあります。危険を回避して安全に進むことの選択と、危険を冒してでもビックチャンスを狙う。このドキドキするようなシチュエーションで、私たちの脳は、どのようにこの決断のバランスを取っているのでしょうか。
今回、京都大学大学院医学研究科 佐々木 亮 助教、同高等研究院ヒト生物学高等研究拠点 (WPI-ASHBi) 伊佐 正 主任研究者(兼:同大学院医学研究科長/教授)らの研究グループが、この選択のバランスを取っている神経経路を特定することに成功いたしました。これまで報酬系と呼ばれる経路が、この選択のバランスに関わっていることが示唆されていましたが、技術的な問題から詳細な解析が行われていませんでした。今回、オプトジェネティクス(光遺伝学)の技術を用いて神経経路を操作し、1) 腹側被蓋野 (VTA) から腹外側6野 (6V) へ伸びる神経経路がこの選択に関わっていることを実験的に確認いたしました。さらに、2) 腹外側6野下端腹側(6VV) への刺激により“ハイリスク・ハイリターン”の選択を、腹外側6野 下端背側(6VD) への刺激により“ローリスク・ローリターン”の選択を好むようになることを明らかとしました。3) さらに6VVへの刺激が蓄積されることにより、より“ハイリスク・ハイリターン”の選択を選ぶ傾向があることを見出しました。4) さらに神経活動をコンピューターで解析することにより、サルの意思の解読にも成功いたしました。本研究成果により、これまで明らかとされていなかった意思決定プロセスの一端が明らかとなり、全体像の解明へ大きく前進いたしました。
本研究成果は、2024年1月5日(米国東海岸時)に米国科学誌「Science」にて公開されました。
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論文書誌情報
Sasaki, R., Ohta, Y., Onoe, H., Yamaguchi, R., Miyamoto, T., Tokuda, T., Tamaki, Y., Isa, K., Takahashi, J., Kobayashi, K., Ohta, J., & Isa, T. (2024). Balancing Risk-Return Decisions by Manipulating the Mesofrontal Circuits in Primates. Science. https://doi.org/10.1126/science.adj6645